クローバーフィールド(マット・リーヴス)

 『トランス・フォーマー』において、「足元からみる怪獣映画」は飛躍的に進歩した感がありましたが、この作品で行くところまでいったという印象。(笠井アナもいってたけど)手持ちふらふらカメラにCGがよく馴染んでいて、動的合成もこなれてきたという感じです(ただし決めの画はやっぱりフィックスなんだけど)。中規模予算(J・J・エイブラムス談)にしてはスケールがそれなりにあって、予算の使いどころが上手かったんだろうなと感心。特にプロダクション・デザインが素晴らしかった。
 さて、正味なところ、これは怪獣映画の顔をした9.11エクスプロイテーションなんですね。「日本にキャンペーンで行ったとき、おもちゃ屋にゴジラの人形が置いてあって」みたいなもっともらしい話をエイブラムスがしていたけれど、「ほとぼりが冷めた」といえるタイミングを計っていたのでしょう。まずニューヨークが舞台というのがズバリだし、モフーッと倒壊したビルの埃が襲ってくるシーンにそれが端的に象徴されていました。あの時の民生用ハンディカムの画をみて、エンターテインメントに落とし込むには?と、ずっと研究してたんだろうなあ。
 ところで、主要登場人物であるカメラマン役のハッドは(空気が読めないという言葉がきらいなのであれだけど)的外れな言動に本当にイライラさせられた。ハリウッドの娯楽作品では典型的なキャラクター造型ですが、あれなんとかならないのかな?
☆☆☆1/2
※いささかネタバレですが、最初から最後まで同じカメラというのは設定としてもちょっと無理が感じられましたね。複数の回収された映像から全体像が浮かび上がる、というのを期待していたので、その点少し肩すかしでした。続編に期待かな。