合衆国最後の日(ロバート・アルドリッチ)

 ケヴィン・スペイシーの出ていた『交渉人』は、頭脳戦を謳っていながら最後の方はアクションの力業でグダグダになって非常に失望させられたものだったけれど(予告編にもあった、一方的に電話を切って、「また掛けて来る」と断言するシーンだけが格好よかった)、この映画の心理戦の描写は素晴らしく「そうそう!あの時はこういう映画を期待してたのに・・・」と思い出しました。またポリティカル・サスペンスとしても良くできている。アルドリッチといえば「男と男の意地のぶつかり合い」という(いい意味で)暑苦しい映画というイメージがあったのですが(実際この作品も女性が一ミリも登場しないけど)、スプリット・スクリーンの使い方の巧みさも含め、意外と器用で繊細なところもある監督なんだと認識を改めました。
 終始アメリカの良心を体現するようなキャラクターである国務長官を演じるメルヴィン・ダグラスが実にいい味なんですが、終幕近く、そんな彼に大統領(チャールズ・ダーニング)がある約束の履行を問いかけます。対する彼の答えは「無言」。解釈は観客に委ねる、という演出なのだと思いますが、やっぱり「心情的には約束を守りたいが、国益を考えるとそれはできない」という苦渋の選択というのが妥当な観方なんでしょうか?映画を見た方の解釈が気になりました。
 ところでスティーブン・ハンターの『真夜中のデッド・リミット』を連想したのは僕だけだろうか・・・
☆☆☆☆