オール・ザ・キングスメン(スティーブン・ザイリアン)

 「定番」の力強さを感じた。狂言回しのポジションである主人公の記者にジュード・ロウ、田舎出身の理想主義者でやがて政治の世界の汚れたゲームに取り込まれていく物語の中心人物にショーン・ペン
 映画の進行は主人公のモノローグで綴られていく、ということからも分かるようにハードボイルドのタッチ。ただストーリー自体は、(現実の事件をモデルにしているとはいえ)今までになんども観たような話。それがグイグイ惹きつけられるのは役者にやっぱり力があるから、というのも勿論あるのだけど(ジュード・ロウを久しぶりにいいなと思ったよ)、こういうジャンルの物語の定石を外さない丁寧な作りになっているから。「些細な要素を疎かにしない」というだけでもちゃんとした映画になるというお手本みたいな作品である。
 その一方で、主人公の父親的存在の地方判事(アンソニー・ホプキンス)が政敵に回ったため、心ならずも彼の過去を追及し脅迫する、というノワール的エピソードで娯楽要素を補強することも忘れない。まさに全方位的に抜かりのない作り。
 と、ここまで褒めてきて残念なんだけど、結末のつけ方まで予想通りだったんだよね・・・。(実話だから仕方ないということじゃなくて、その上で演出上どういう終わらせ方を選択するかという意味で。まあ、あれ以外の決着のつけ方は思いつかないけれど。)
 よくよく考えたらショボイ映画だったとしても、最後だけ盛り上がればいい作品だったような気がすることの反対で、最後まで定石どおり(悪い言い方をすれば凡庸)なので今となっては印象が薄い。大作らしい重厚な画づくり等、褒めたい箇所はたくさんあるのだけど、そこだけは残念でした(贅沢すぎるかな?)。あと僕は『虚栄のかがり火』が結構好きなので、趣味が合わない方はそこも割り引いてください。
☆☆☆☆