一応邦訳されたものは全部読んでいるファンであるという前提で、あえて苦言を呈したい(ややネタバレ)。今作も気になったのだけど、筆の進み具合で構想時点と異なる展開になった場合、前半でばら撒いた伏線を後半にむりやり修正をかけていないだろうか?あるいは気付かずにそのままになってる事、多くないっスか?どーもつじつまが合わないという箇所がどの作品にもあるんだよね。
今回でいうと、飲んだくれの私立探偵であるウォルターが豹変して、借金取りを射殺するという件。当初は謎の殺し屋「プレーオフ」の正体が実は彼の2重人格の片割れという設定だったのでは?場面の切り替えの流れにそういう匂いがするんだけど・・・でもあんまり無茶なので射殺の件は結局ウヤムヤになっちゃうんだよね。ちなみにファンの皆さんならご存知のとおり、ウォルター・ウィザーズはこのあと(というかやさぐれる前の時代)スピンオフ作品「歓喜の島」(97年作)で主役を張ることになります。この作品(94年作)での扱いがあんまりだったから作者が同情したのかな。
感想を映画鑑賞風にいうと「料金分は面白かった」作品ではあります。邦訳全作品を読んでるくらいだから作者の世界はもちろん好きなんだけど、どうも「手癖で書いている」印象が拭えない。「タフを装っているけどナイーブな主人公」が「最初に依頼を受けたときには想像もしなかったような大事件」に巻き込まれて、大活劇を繰り広げた結果、万事丸く収まる。
これは悪く言えばワンパターンということだけど、その一方で盛り上げどころを心得ていて、カタルシスのある決着を付けることができる職人気質と見ることもできる。気晴らしに見に行ったアクション映画でストーリーの些細な瑕疵は気にしないのと同じだ。
ところで前作が訳されてもう6年にもなるんですね・・・早いな!
☆☆☆