カンフーハッスル(チャウ・シンチー)

ドーパミン全開!!!のアクション。周星馳がまさに満を持して放った会心の1作である。

前作少林サッカーは、(Mr.Booのような)オールドスクールの香港コメディスタイルで、ただでさえ満腹なところに満漢全席を詰め込むような足し算の過剰さが売りだった(そしてそれこそがシンチー印でもあった)のだが、今回はその要素はやや控えめ。「功夫」に懸ける本気さ加減がそこにもうかがえた。

功夫殺陣の素晴らしさは既にいろんなところで語られているのであれなんですが。マトリックスのフォロワー的作品には「ハリウッドスターによる吹き替えなしアクション」の新機軸としてデジタルVFXの導入が必然だったとしても、ジェット・リーみたいな地力がある人の美技をカット割りするのはいかがなものか、という不満があった観客へのいい回答だったなと。個人的にこの映画でのベストバウトは「琴を抱えた2人組の刺客」対達人のギリギリの攻防だったのだけど、そのギリギリさ加減や「達人のみが達し得る境地」での戦いの表現は、まさに「古くから香港アクションを支えてきた名人」+ワイヤーワークの洗練とデジタル技術の向上があって初めて成立した名シーンだと思う。これが見たかったんだ!と心のなかで膝を100回くらい叩いたことでしたよ。

セントロ・デジタル・ピクチャーズによるGGIも、「風雲」の大雑把だけどまあマンガだから、と思ってた頃から比べると大分こなれてきた印象がある。(キル・ビルもここがやってたんですね。)

ヒロインとのロマンスがあっさりだったり、意外なほど主人公の登場シーンが短かったりという、もっと見たいを喚起する引き算のつくりも洗練を感じさせる。シンチー、ネクストステージか?と見せかけて次の映画がまたしょーもないコメディだったらそれもまたよし、ですが。
☆☆☆☆