読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゴーストライター(ロマン・ポランスキー)

 正直、登場人物が全員出揃ったところでネタは割れているようなものなんだけど、それは欠点では全くなくて、クリシェの枠組みだけでどこまで魅せきるかという一流シェフの試み※1を味わうような作品でした。そういう意味では世評芳しからぬ『ナインスゲート』とぴったり同じ立ち位置であるように感じます。あの映画もかなり好きだったので、観終わった後の印象としては両作品の評判のギャップにいささか驚くのだけど、やっぱりきっちりオチてるオチてないというのは娯楽作品の評価要素としては重要ということなのでしょうか。
・今時あんな分厚い原稿を持ち運んだりするものなのか?というのがまず気になったのですが、作品を通して観ると(結末含め)、やはりあの「分量」でかつ「紙」じゃないとダメなんだ、という監督のこだわりを感じられて納得でした。思えば『ナインスゲート』はそのものズバリ書物フェティッシュにまつわる話だったし、『戦場のピアニスト』の楽譜、『チャイナタウン』の図書館で資料を破り取るくだりなど、ポランスキー作品では「紙」に関する印象的なシーンが意外と多い気がします。
・クレジットを見て「地元の老人」がイーライ・ウォラックだったと知ってびっくりした。『ホリデイ』とか『ウォール・ストリート』とか最近作にもコンスタントに出てはいたけど、クレジットを見て驚くというパターンを繰り返しております。あまりに『続夕陽のガンマン』のイメージが強すぎて…
・という訳で、役者さんは総じて味わい深かった※2。ブロスナンの安い感じも、そこを含めてナイスキャスティングと言わざるを得ない。
・そしてユアン・マクレガーには曇天がやはりよく似合う。曇天役者と呼びたい。
・舞台はアメリカですというのはどうにも苦しいけど、『漂流街』なみのロケーションの強弁ぶりもこの作品のチャームポイント。
・「制度上、概念上の虜囚」という元英国首相の立ち位置が監督自身を想起させるというのは、やっぱりポランスキーらしいひねくれたユーモアなのかな。
☆☆☆1/2
※1そんな高級なレストランなんて行ったことないけど。
※2しかし大好きなティモシー・ハットンが出ていたのには迂闊にも気づきませんでした。