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バッド・ルーテナント(ヴェルナー・ヘルツォーク)

 オリジナルのほうはなんだか辛気臭い感じがして見てないのだけれど、ニコラス・ケイジでリメイクという意外さ以上に監督がヘルツォークだって?!という点で見てみました。正直現役という感じがなかったし、題材もなんだか奇妙な取り合わせ。さて実際に観てみたら…
 カトリーナの爪痕痛々しいニューオーリンズ。水没した拘置所から気まぐれで囚人を救出したテレンスは、その際に腰を痛めてしまう。「警部補(ルーテナント)」には昇格したものの、腰痛に耐えかねて処方された痛み止めが切っ掛けで、彼はよりハードな麻薬に耽溺する。やがて彼は麻薬を手に入れるためには手段を選ばない「悪い男」に転落していくのだが・・・
・なじみの娼婦役がエヴァ・メンデスというのがハマリすぎてて笑う。考えてみたら『ゴースト・ライダー』のカップルでもあるんだけど、こちらの組み合わせの馴染み具合の絶妙さときたら。なにせ「全ての州の男としたったわ!」と語る剛の者だからその印象が強くてね…
・肝心の話は「職務には熱心なんだけど、人としての欲や業も隠せない男」の物語。よく言えば人間味がある、悪く言えばだらしない人ですね。そういう点が題材としてヘルツォーク的ではあるのかも。オリジナルがどういうトーンだったかは分からないけれど、どちらかというとブラックコメディの呼吸で撮られております。笑っちゃうしかない転落ぶりという点で僕は『Uターン』を思い出しました。ただ主人公はあちらほど人でなしではないので、ギリギリシンパシーを感じられるという点で観やすいかもしれません。
・何しに出てきたんだヴァル・キルマー。この人がサングラスで登場すると、銃撃戦が始まるんじゃないかと反射的に身構えてしまうよ・・・その一方で割りと普通の人役でブラッド・ダーリフが出てきたり、と不思議なキャスティング(監督好みの顔ではあるかな)。
・舞台がNYからニューオーリンズになったのは、テーマに変更があったくらい大きな違いになったのではと推察します。最近では『プリンセスと魔法のキス』にあったように、呪術的なものが息づいている(とされている)土地柄が、ドラッグでラリッてしまって現実と幻想の境界が曖昧になっていく主人公の主観と相まって、観客をマジックリアリズム的な境地へ誘います。そうであればこそ、終盤の余りにご都合主義的に畳み掛ける展開も飲み下せるというもの。(ある意味、この舞台そのものが主人公ともいえるのかも。)しかしその一方で、円環を成す物語の結末が「それでも現実は続けていかなければならない」という一抹の苦さと共にあるのが良かったです。※
☆☆☆1/2(4点でも、とは思ったのですが…)
※この辺りは大災害の忘我状態からクールダウンして現状を突きつけられた、という現実の問題と呼応していたのかもしれませんね。