AVP<エイリアン・バーサス・プレデター>(P・アンダーソン)

大雑把にいって公開前の批評家筋の評判は芳しくないものだったと思う。しかし彼らはエイリアンやプレデターの映画に何を求めていたのか?この作品には観客が見たいものが過不足なく詰め込まれている。いやせっかくだからサービス精神は旺盛だと書いておこう。世間的には(もう一人のPTAと比較して)「駄目な方のアンダーソン」などという不名誉なふたつ名を頂戴されているようだが、僕にとっては「アベレージヒッターのアンダーソン」である。そしてその期待は今回も裏切られなかった。

この監督を初めて知ったのは、おそらく多くの人と同様に「イベント・ホライゾン」だった。この作品は伝統的な「お化け屋敷映画」を宇宙でやったらどうなるか?と一言で言い切ってしまえるような企画でありながら、その独特のデザインやガジェットと得体の知れないテンションの高さで凡百の作品から頭一つ抜きん出ていた。もちろんプロダクション・デザイナーのセンスによるところが大きいのだとは思うけれど、その後のフィルモグラフィーを眺めても、独特の世界観構築(ちょっとSMチックな鎖と棘と重油のニオイのするような)は健在である。思うに、ディテールへのこだわりがそのまま物語の核となるような企画の時、監督の真価が発揮されるのではないか。という訳で、両シリーズへの目配せも行き届きつつ、ガジェットへのこだわりも爆発した(エイリアンクイーンの拘束具!)快作になっていた。

物語はネタバレしないように書きません(唸るようなツイストがある訳ではない)。でも危惧されていた大味な「ウルトラファイト」ものではなくて、謎の地下ピラミッドへの探検行は予想以上に丹念に描かれる。これも個人的には映画は「プロセスを描いてなんぼ」だと考えているので、ポイントが高い。

ところでプレデターはよく言われるように「誇り高き(ハイテクの)蛮族」という造形になっていて、外見的にはドレッドヘアで、精神性ではサムライ風だったりということなのだが、獲物に近づくのに透明というのはやっぱりフェアじゃないな。前々からそのことは気になっていたのだが、今回の「狩り」の目的を考えるとその矛盾が顕在化したような・・・まあ敵を仕留めた後の見得の切り方なんかは鳥肌が立つくらいカッコいいからごまかされちゃうけども。

あとウェイランド社は衛星を所有するような大企業なんだから、便箋の企業ロゴはもうちょっとシックな方がいいのに、とそこが何だか残念だった。(過去の作品をそこでも踏襲してるのだったら逆に感心するけど。)