台北プライベートアイ(紀 蔚然)

 ミステリ版『吾輩は猫である』という感じでした。高等遊民の低徊趣味の風情。これは翻訳の方の仕事が素晴らしかったと思います。

 『吾輩~』が(どこにでも行けるカメラとして)猫の目に仮託して世相を風刺していたように、調査の名目でどこでも入っていくところから「探偵」という主人公を逆算していたような。愛すべき偏屈者を慕っていつしか若人が集うところも苦沙弥先生っぽい。作者は日本文化にも詳しいようだから実際参照してたんじゃないかな?

 ロマンティックだけではない苦さがあって、でも人は孤島ではない、という結びが良かったですね。

☆☆☆☆