読みにくいとされる『悪魔は死んだ』が作者の既訳長編ベストだと思っていて。理由を考えると、どんなに迂遠なストーリーテリングであっても、最終的には「冒険活劇もの」というジャンル小説の枠組みに帰ってくるという安心感があったから、かもしれない。
翻るにこの作品は、散々寄り道、飛躍したあげく、そもそも帰ってくる気がなかったという大技を使っていて、いやー厳しかったっすね。例えて言うなら『指輪物語』に対する『シルマリルの物語』的というのか、ラファティ世界のバックグラウンドが掘り下げられているものの、掘り下げることそのものが目的で、物語全体をドライブするなにかが決定的に欠けているような気がしました。
☆☆☆