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アベンジャーズ(ジョス・ウェドン)

 まさしく王道のヒーロー映画!まずは監督の手際の良さを賞賛したい。例えるなら『ダイハード』みたいな、展開のスムーズさとテンポの良さそのものが観客のご馳走といった性格の作品ですね。無駄のない筋運び、しかし駆け足ダイジェストといった印象はなくて、各キャラクターについてもバックグラウンドを感じさせる的確な造形となっていました(それでいて未見の観客に復習欲をそそる感じも上手い)。アンサンブルドラマなので、以下キャラクターについて思ったことをメモ。
・ソーについては、正直、割かれているボリューム自体が控えめ。そもそも今回の敵役ロキの起こす騒動の発端は彼との兄弟喧嘩にあった訳ですが、曲がりなりにも神様たちなのでさすがに人間界のヒーローたちとは些かパワーバランスが取りにくかったのかな?と「これくらいで勘弁…」という監督の苦慮が偲ばれました。
・ブラック・ウィドウとホークアイがドラマとしては今回の中心人物ではないでしょうか?ロキに洗脳されたホークアイ救出を真っ先に買って出るブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ。彼女は彼に、かつてカルマの無間地獄から自分を救い出してくれた恩(以上の感情)を感じている。それは同じ血塗られた過去を持つ者同士だからでもあるし、それだけに洗脳中とはいえ仲間を手にかけてしまったホークアイの苦悩にも共感できる。そもそもアベンジャーズとはいえスーパーパワーがあるわけでもない人の身で過酷な戦いに参加していくというのは、彼らにとっての一種の贖罪なのではないかとも思われて。そこが燃えた。(まあ単純に、風を読んで射出する、標的を見ずに撃つ、というアクションそのものが滅法恰好良いのだけど。)
・アイアンマンは、ロバート・ダウニー・Jrがトニー=社長っぽい言動をするだけで面白い、居るだけで場面が持ってしまう、という稀有な状態に突入しているので、娯楽作品としては彼が主役ポジションになるのは仕方ない。実際、作品のフックとして観客アピールには随分貢献していたと思います。あの降下合体のスリル!
・ハルクは、当初キャストがマーク・ラファロに確定したとき、あーそうなんだ・・・とあまりピンとこなかったのだけど、実際に観た後ではこのキャスティングでないと物語が成立しなかったという必然性が感じられました。本能の爆発を温和な風貌の内側に必死で封じ込めている、という造形。逆に言えば、エドワード・ノートンだったら神経質な印象が強すぎて、例えばトニーなどと真っ向からぶつかってしまいストーリーの進行を阻害しかねなかったような※1。メンバー中、ラファロ/ブルースが一番「大人」な人物ゆえ、食って掛かる他の人物をやり過ごすことができる。しかし一方でその消極的な姿勢が仇となって、ニック長官が期待するようなアベンジャーズ一番の破壊力を発揮してもらえない…という一筋縄でいかない組織力学のサスペンスが映画をドライブしていきます。この辺りも巧かった。
・そしてもちろんキャプテン・アメリカ、実は彼がこそがこの映画の真の主役ではなかろうか。先行する『ザ・ファースト・アベンジャー』では四角四面なボーイスカウトぶりが、かつての「娯楽活劇」を再現するというエクスキューズがあったとしても、如何なものかという印象が拭えませんでした。しかしその前振りがこのような形でクライマックスに結実するとは!実際今回の映画中でも「君のそのオールドファッションなところが、今の世界に役立つ時が来るはずさ」と何度か言及されるのですが、ほかのヒーローたちのスーパーパワーに比べると、強化された人間に過ぎないため貧弱なのは否めない。しかしことあるごとにアベンジャーズのリーダーとしてイニシアティブを取ろうとするキャップ。いささかしらけ気味のメンバー・・・ところがそんなハンディをものともせず、自らの体が傷つくことも顧みず危険な状況に積極果敢に飛び込んでいく彼の姿勢に、次第に他のメンバーたちも心動かされていきます。
 それが一番端的に表れていたのは、突然現れて指示を出すキャップに現場の警官たちが「あんたいきなり何言ってんだ?」と反発すると、縦横無尽に体を張って有無を言わせぬ説得力で圧倒するシーン。まさに「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ」を地で行く男。作り手もちょっとアナクロなところは承知の上で、しかしこういう現在だからこそ「善をなすとは何ぞや?」と問う以前にまず動いて見せる王道のヒーロー像を描いたのではないでしょうか。米国がこう見られたい「アメリカの良心」の体現。正直、傷ついても常に前に前に進むキャプテン・アメリカの姿に僕も感動してしまいました※2。物語上、チームが結束していく過程とシンクロしているのがまた心憎い。
・監督についての褒めポイントをさらに付け加えるならば、NY中を自在に駆け巡るカメラ、シームレスなアクションの連続を位置関係を混乱させることなく提示する手腕も確かという点。アイアンマンの発射する小型ミサイルの軌跡の描写などを見ていると、映画的というよりはむしろ(日本の作品を参照している跡も伺えるけれど)アニメ的かもしれない。しかしそういうゴタクはさて置いても、活劇として素直に興奮させられました。これは予想外に傑作だったな。
☆☆☆☆1/2
※1 ノートンが『アベンジャーズ』出演がなかったことに関して、「僕はああいった種類の映画に出演することに時間を費やしたいとは思わないんだ。ほかにたくさんやりたいことがあるからね」という「きつねとぶどう」みたいなコメントをしたという記事がありました。そうこなくっちゃ!さすが期待を裏切らないノートン節。
※2 ところがそれを演じているのが、あの軽薄な『ファンタスティック・フォー』のヒューマン・トーチとは!役者ってやっぱりすごい。しかしファンタスティック・フォーが合流したらどうするのかしら…