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問いのない答え(長嶋 有)

読書

 SNSでゆるやかに繋がるここ最近の世間のありようをまるごと文章世界で再現する、ということと、そこから「秋葉原通り魔事件」や「東日本大震災」という大問題へ斬り込んでいく(ただしいつものようなささやかな身振りで)というのが今作のテーマだったと思うのだけど、というかまんまですが、残念ながらそれが上手くいっているようには思えなかった。
 その要因として、1.空中ブランコのように次々と主体が入れ替わるというスタイリッシュな語りのスタイル:主題に対する心理的、地理的距離感は人それぞれなので、いろいろな立場の登場人物が折に触れ感じる心の移ろいからこそ描き出せる、という狙いに対して(だからこそツイッターという軽さを採用しているのも分かるけれど)、やはり多面的に描くにしてもそれなりに腰を据えた描写が必要だったのではないだろうか。
 2.むしろブルボン小林名義の方がしっくりくるような「あるある」的な内面描写:言語化されて初めて確かにそうだ!、と膝を打つようなコラムは作者の得意とするところであって、今回対象にしているような事柄を扱う場合でも、人間四六時中眉間に皺を寄せて思い煩っているわけじゃないよね、というバランス感覚を大事にしたかったのだと推察するのだけど、やはり軽すぎる印象は否めなかった。「震災以後」をいかに扱うか、というのは作家にとって大きな問題であって、いかに対峙するかということへの作者としてのひとつの真摯な回答ではあったのだと思うけれど、かなり物足りなかったと言わざるを得ない。
☆☆☆