ワンダーウーマン 1984(パティ・ジェンキンス)

 冒頭の強盗のくだりがドナー版スーパーマンっぽくてよかった。「ヒーロー活動の日常」というのが好きなので、終始あのトーンで通してもらっても構わなかったくらい。 

 ところで、強盗団のおっちょこちょいな感じとか、のったりした段取りアクションとか、いかにも80年代という感じなんだけど※1、本題を進行するにはノイズになると思ったのか、あのパートに限定的で、だんだん今どきの演出になっていくのは残念でした。逆に言うと、現代のアクションの組み立てって自然な流れによる導入、リアル風な格闘が徹底されていると気づかされます※2。

 さて、本筋の話でいうと、利己主義への異議申し立て、異なる見解による社会の分断からの恢復とは?みたいな大テーマが掲げられていたと思うのだけど、冒頭では丁寧に描かれていたバーバラ関係の描写がヴィラン化してからはほぼ放り出されてしまっていて(なんなら自己責任論を補強するような感じですらある)、それなら最初から悪人として登場すればよかったのにな、と思いました。

☆☆☆1/2

※1 撮り方、編集の呼吸など、その時代の技術の総体として画面に現れるものだから再現って難しいんじゃないかと勝手に思っていたけど、エミュレートできるものなんですね。すごかった。でもやっぱり「今って80年代リバイバルが来てるんでしょ?」というマーケティング的要請でフックとして1984年が設定されているだけで、必然性には乏しかったような…

※2 担当はボーンシリーズのあの感じを作り出したことで有名なダン・ブラッドリーでした。