ドライブ・マイ・カー(濱口竜介)

 役者が演じることに関する物語という以上に、そもそも本質的に人間が生きていく上である役割を「演じる(演じざるを得ない)」ことについて語っている映画ではないかと思いました。(ペルソナといってもいいかもしれないけれど。)

 感想としては以上なんですが、いくつか気になったことについてメモ。

・AからBへの車の移動の引きのショットを、教科書的というかものすごく律儀に撮っているけど(特に空港のシーン)、省略も可能なのにあえてっていうのはなぜなのか。(しかしそれがこの作品のトーンになっている気もする。)

・音のセックスシーンの虚無的な顔も類型的すぎるような気がするのだけど、ステレオタイプすぎて逆に意図があるような…

・『ワーニャ伯父さん』のセリフがあまりにも本体を補完しているので、すごい!天才だなと小学生みたいな感想になってしまったけど、もちろんそれは主客が転倒していて、脚本が逆算して構築されているんですよね。(それがすごいのだけど。)

・みさきの故郷での母のエピソードはちょっと盛りすぎじゃないかと正直思いました。

 全般的に淡々とした展開でありながら、画面に目を惹きつけて離さない演出が素晴らしかったですね。

☆☆☆☆