名作の誉れ高い脱獄もの。所謂、逃走経路の計画、そのために必要な人間関係の構築やそれぞれのバックグラウンド、みたいな定番の要素は意外な程あっさりな描写に留めて、ひたすら脱獄に必要な穴掘りや鉄格子の切断のようなフィジカルな描写を淡々と重ねていきます。
通常の映画なら掘り始め着手のカットから後は省略するところを、この映画では執拗に撮り続ける。特に最初の床のコンクリートに穴を穿つ長回しのシーン、その余りの硬さに観ているこちらが諦めそうになる頃にようやく手がかりとなる傷が生じ、少しずつ亀裂が広がっていく。脱獄するとはこういうことなのだ、と皮膚感覚に訴えかける強烈な説得力。全編通して、幼いころ自転車のパンク修理の工程に不思議に惹きつけられて目が離せなかった時のような、「具体的な描写」の持つ力を思い知らされました。
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