今回のターゲットは<殺戮機械>ココル・ヘックス。敵対する部族に対して送り込んだ「独創的な死刑執行マシーン」にちなんで名づけられた二つ名である。手がかりを求めて奔走するガーセンは、ふとした機会からヘックスに誘拐されたある工場主と知り合うことになる。彼はヘックスからオーダーを受けた「奇妙な要塞」がそのトラブルの原因だというのだが・・・
さて2作目です。血沸き肉躍るスペオペの世界が展開されるのかと思いきや、今回もあらぬ方向へ物語は捻じれて行き…ココル・ヘックスの注文通りの「要塞」実現までの過程に相当なボリュームが割かれる始末(ちょっと企業小説っぽい)。また、今作の重要な舞台として「交換所」という安全確実な人質と身代金交換を請け負う機関が登場するのですが、それが半ば公認の組織として存在するという世界観のひねくれ方がいかにもヴァンスらしいというか。だがそこがいい!ターゲットに辿り着くまでの一見迂遠なストーリーテリングが、しかし不思議とリアリティがあって納得させられるディテールを備えている。「大宇宙を股に掛けた復讐劇」という大ボラの枠組みの中にあって、実際に対面した(仰々しい煽りの後登場する)魔王子の思わぬ小物ぶり※を始め、基本的に身勝手な人たちしか登場しないところに現在の世界との地続き感を感じさせてくれます。作者一流のこのセンス、やっぱり好きだな。
☆☆☆1/2
※テンドンというか、これがこのシリーズのお約束なんですかね。