アメイジング・スパイダーマン(マーク・ウェブ)

 僕のスパイダーマン原体験は御多分に洩れず東映特撮の「スパイダーマン」なんだけど、程なくして、アメコミの伝道師である小野耕世編訳の「よりぬきスパイダーマン」的な(有名ヴィランの登場エピソードを日本のいわゆるコミックスのフォーマットでまとめた)マンガで読んで、なるほどアメコミとはこういうものかねえと刷り込まれたものでした。戦闘の合間にも減らず口をたたく、ちょっと思慮の足りないところのある青二才。※1
 ところがサム・ライミ版では演じるトビー・マグワイアに引きずられたのか、些か辛気臭い話になっていて、正直、手放しに面白かったのは「2」だけでした。だから今回のリブートではどうなるものか、もっと能天気な話でもいいのにな、という期待とともに観に行ったわけです。結論からいうと、ライミ版の先入観と枠組みを上手いこと利用した快作になっていたと思います。何より、青二才感とアクションシーンでの減らず口の再現がよかった。巧く言えないのだけど、ライミ演出による幼さと空回りな感じは、血肉を備えたキャラクターとしてはちょっといびつな印象があったので。
 と、書いたところで手のひらを返すようですが、今作のコンビニでの顛末「いいじゃないか2セントくらい」「冗談じゃない、次の客の邪魔だからどいてくれ」というやりとりは店員を感じ悪く描写してるけれど、完全にピーターの方が悪いという話で※2。考えなしなところもやり過ぎだと共感しにくいな・・・というバランスを救っているのが、ヒロインのグウェン、というか演じるエマ・ストーン。ぱっと見勝気なんだけど、繊細な部分を秘めているというキャラクターで、ここ最近観た中で彼女のおかげで盛り返したという印象の作品は多い。この映画でいうと、特に結末部分「いくら約束だからって、あの場に(公に)参加しないのはグウェンをもっと傷つけることになるのでは?」という展開があるのだけど、ライミ版でもなんかこういう常識的にはどうだろうというドラマありきのシーンあったよな・・・と萎えかけたところで、くるりと振り向いて物凄く察しのいいセリフで観客を救ってくれるのでした。まあ完全にご都合主義といえばそうなのだけど、そうと感じさせないエマ・ストーンのヒロイン力!続編も彼女を見るためだけに足を運んでもいいな。
☆☆☆☆
※1 だからカプコン対戦格闘ゲームMARVEL SUPER HEROES」で「グッジョブ!」「ヒャッホー!」というセリフを連発するスパイダーマンを見て、ああやっぱりあちらではこういうイメージなんだな、と思ったね。むしろこの映画があのイメージを援用している感すらあります。
※2 あとからグウェンのお父さんである警部補に「同じ容貌の犯罪者ばかり狙ってるのは私怨だからだろう」と痛いところを突かせているのは、作り手がピーターの独善的なところにも意識的だということで、少し安心しました。
※ エンドクレジットを見て初めて気が付いたのだけど、スパイダーマンが救った男の子のお父さん役はC・トーマス・ハウエルだったんですね。こうして細々とでも今なお出演しているのを見ると、心救われます。