ここ最近の「息苦しくて窒息するかと思った映画」第一位は『青春の殺人者』だったのだけど(以下、『レクイエム・フォー・ドリーム』などが続きます)、久々に塗り替えられそうな勢いの作品でした。
まあ、なんと言っても登場人物の顔の暑苦しいこと。ギトギト汗ばんで、性格は破綻していて、現実世界では絶対お近づきになりたくない感じ。演じる役者の顔自体も変に歪んでいて(踊り子役のコニー・スティーブンスもなんだか・・・)、正直夢に出そうに怖い。(他の出演作品を観るとそうでもないので、やっぱり撮り方なんだなと感心するのですが。)
身も蓋もない言い方をすると「ストックホルム症候群」の話(実話ベース)なのだけど、虚飾に塗れた世界で心を殺して生きてきた少女に、逆説的に真実の愛とは何かという光が差した瞬間を描いた物語、ということなんでしょう。クライマックス直前までの胸焼けするような描写の積み重ねが効いて、落差で結末は結構グッときます(僕はDVDのエンドが好き)。
とはいえ、途中で投げ出さずに観られたのは、劇中本当に唯一の常識人である私立探偵フェナーの優しさがあったればこそ(要所要所でのセリフがいいんですよね)。映画のストーリーテリングに関しては、人物の配置への気遣いも努々怠ることなかれという真理に改めて気付かされます。
☆☆☆