ピアニストを撃て(フランソワ・トリュフォー)

 原作を先に読んでいたので、客観的に映画のみで判断できないのだけれど、正直ちょっと物足りなかったです。(またぁ!?)
 グーディスによる原作はアメリカが舞台で、ストレートなクライム・サスペンス+悲劇風味。冒頭からこれはハッピーエンドにはなり得ないという空気が濃厚で、逆にそういうベタなところがミステリ好きには堪えられないという作品だったのですが、映画のほうはそういう期待を脱臼させるようなトリッキーな撮り方と演出になっております。
 まあそれこそがヌーヴェル・ヴァーグということなのでしょうか(よく知らないんですが)。ただトリュフォーのファンでも賛否両論あるようで。肯定的な見解としては、「見ず知らずのおじさんの言葉に人生の真実の一面を知らされたり、冷酷なギャングでも行きがかり上こどもの歓心を買わなくてはならなかったり、悲劇的な物語が進行している時も、現実にはそれ一辺倒ではないはずだ」という批判精神の表れとみているようです。考えてみたら、原作:陰のあるハンサムガイ→映画:小心者のおっちゃん(シャルル・アズナヴール)というところからして、ある種の戦略がうかがえますよね。
 ところでピアニストが主人公のノワールといえば、同ジャンルとしては近年出色の出来だった『真夜中のピアニスト』ですが、あれってハーヴェイ・カイテルの『マッド・フィンガーズ』のリメイクだったんだよなぁ、ということを思い出して猛烈に観たくなってきました。DVD出ないかなあ・・・
☆☆☆1/2
※昔の小説の感想を見たら割と正反対のことを書いてた・・・あてにならないものですね。