影なき狙撃者(ジョン・フランケンハイマー)

 『フレンチ・コネクション2』や『RONIN』のイメージが刷り込まれてるところが正直あったのですが、『ブラック・サンデー』を踏まえて改めて思ったのは、意外と演出のレンジが広い監督だったのだなということでした。
 どんな映画でも「このシーンが成功しているから7割は成功したも同然」という肝になる場面というものがあると常々考えているのですが、この映画でいえば間違いなくアジア共産圏による洗脳シーン。洗脳される側の兵士たちの主観映像としては「有閑マダムの園芸教室」なのに、実は大学の臨床実習のように東側のメンバーが洗脳の実態を視察にきている現場である、という正に悪夢的なイメージ。相互の映像がシームレスにシャッフルされることで、鑑賞者の現実崩壊感すら煽られる。リメイクは未見なので、該当シーンがどのように再現されたのかは知らないのですが、あざといとはいえ一気に「掴む」演出は実に見事でした。チャルディーニの『影響力の武器』によると、共産圏による実際の洗脳(英語でもブレイン・ウォッシュなんですよね。すげえ言葉だな直訳やんか。)過程はそんなSFじみたものではない代わり、協力を自ら仕向けるような巧みな方法だったようですが。
☆☆☆1/2
※見事といえば主人公の母親を演じるアンジェラ・ランズベリーの怪演は相当。そりゃ子供も歪むよ・・・