実はミステリマガジンで「サプライズ要素のある小説」というコラムで言及されていたので読んでみたのだけど、どこにその要素があったのか分からなかったのが一番のサプライズだった。（ネタバレするのでタイトルは挙げませんが、それだったら絲山秋子のある小説のほうが・・・と思ったよ。）
それはさておき、女二人旅の物語。主人公ではなく、ヒロインの方としかいいようがない音生（ねお）の美しさに関する描写とキャラの立ち方は圧倒的だった。しかしながら、共感はできなかったなあ（尤もそういうものを作品から求められている感じもしないのだけど）。ところで登場人物の名前として「音生」ってどうなの？と思わせるのはフックなんですね。技巧をそうと気付かせないさり気なさ。「女の子だって「美しい女の子」が好きなんだ」という『ぼくは落ち着きがない』は長嶋有の返歌だったのか・・・
それにしても、平易な言葉で日記につぶやくように綴られていく物語なのに、ふとした描写と会話でみせる、見てみぬ振りをしたい世事のあれこれについて真っ向から切り込む「身も蓋もなさ」の破壊力！（決して武闘派ではないのが上手い）その辺り作者の独壇場という感じ。そして相変わらず視覚的な構築力が素晴らしかった。ただ、（狭い読み方とは思うけれど）感情移入できなかった、あるいは音生に振り回されてみたいとは思えなかったので星は・・・
☆☆☆
