後年のトゥーマッチな作風からすると、こんなにスタイリッシュな映画を撮っていたとは意外。タイトルから想像される作品からはかなり遠いのでは?ヒッチコック作品やコーネル・ウールリッチの小説みたいに典型的な巻き込まれ型サスペンス。
屋外撮影による銀座を始めとする60年の東京の迷宮的で官能的(ネオン!)な画がとても魅力的。しかも劇伴はジャズというとてもクールな志向の作品なんだけど、それでも垢抜けきらない「邦画」的な部分がこれまた逆に愛おしい感じ。「ハクいスケ」とか時代を感じさせるセリフまわしが好きなんですよね。しかし、当時のナウなヤングは本当に平熱でこういう言葉を使ってたのかな?
話そのものは肝心な箇所を偶然に頼りすぎていて、もうちょっとプロットは頑張ってほしかった印象だけど、(クロスカッティングの教科書みたいな)サスペンスの醸成など演出自体は実に的確。エログロぶりに注視されがちな石井監督(そこも嫌いじゃないけれど)の本質の部分がよくわかるという意味でも興味深い映画といえるのではないでしょうか。
☆☆☆1/2
※ちなみにセクシー地帯(ライン)と読むのだけど、「太平洋ベルト」みたいな高度経済成長期の匂いがする言葉で、そこもジュンとくるのだった。