この監督の作品を初めて見たのは『大いなる遺産』だったのだけど、その時は暴力的に物語に進入してくるエロの要素にかなり戸惑って、かえって印象深かった記憶があります。その後この作品はスルーして、『アズカバンの囚人』がハリーのシリーズとしては今に至るまで個人的にはベストな出来だったので、こういうのも撮れる人だったのかと意外に思い、そして『トゥモロー・ワールド』で大ショックを受ける、というのが今までの経過。
ところで、「尋常じゃない長回しと突発的な事件」という『トゥモロー・ワールド』で映画ファンが瞠目した要素というかスタイルはこの作品でほとんど完成していたんですね。主に社会格差とか、検問に象徴される政治体制とかベタとされるネタを強調するのに使われているのだけど、そういった点の語り口は『トゥモロー・ワールド』では大分洗練されていたような気がします。
ただ、エピローグのためのお膳立てとはいえ、主人公の男2人の言行に全くシンパシーが感じられなかったんだよね・・・
☆☆☆