ネタバレあり。
自動車修理工として働く幼馴染のふたり。ある日かれらに作戦の指令が出される。それは明日、テルアビブにおいて自爆攻撃を決行するというものだった・・・
ヒロインである「英雄」の娘が暴力=自爆以外の解決の方法を模索し、イスラエルへの「密告者」の息子がやむにやまれず自爆攻撃を選択してしまうというねじれの構造が、いまパレスチナの置かれた閉塞状況を端的に象徴しているように思う。また、そのように巧みな人物配置によって生まれる状況的なサスペンスが、この作品の「勉強的な話」にとどまらない物語的な面白さにつながっている。
監督はパレスチナ人であるにも関わらず、どこまでも客観的な視点を失わない(ように僕には思えた)。いくらでもプロパガンダ的に作れるテーマなのにその点が素晴らしい。それが各国で高く評価された理由でもあるだろう。ただ、「種々の事情から覚悟が決まった」状態から物語が始まることもあり、「自爆攻撃」に命を投げ出す若者の心情は、最後までどうしても理解できなかった。
しかし、なにができるという訳ではないけれど、「そういう世界がある」と知ることは大切だと思う。
☆☆☆1/2