ボーン・アルティメイタム(ポール・グリーングラス)

 物語自体は前作である程度きれいに決着がついていたので、多少むりくり作った感は否めなかったけれど、ポスト冷戦時代のスパイ映画としてはこれ以上望めない完成度の三部作だったと思います。(以降ネタバレあり。)主人公が個人的な理由から身内相手に戦う話なので「物語の背景と現実との関係」を考えて暗澹たる気持ちになったりしなくていいし。(たしか伊藤計劃さんの指摘だったと思うけど)組織を裏切った改造人間が追っ手の改造人間達と闘うという「仮面ライダー」の構造を持った話というのが今作ではより明確だった。とにかくひたすら逃亡とバトル。
 ところで手がかりを求めてスペインに入国したら、またしてもニッキー(ジュリア・スタイルズ)が!という思わず「テンドンかよ!」とスクリーンに突っ込まざるを得ない展開が。そんなネタとしか思えない登場だったんですが、実は・・・という、思いつきで作られた3部作の奇跡的な辻褄あわせとしては『スクリーム3』に並んで自分の中では殿堂入りでした。そういえばちょっとブスっぽいところ、何となく似てたもんな・・・
 実はその印象を補強するような描写(絵解きがやや説明的すぎるシーンで、個人的にはないほうが良かったのでは?)もあるんだけど、それ以外にも1作目をなぞるような要素がいろいろあって、3作が全体として円環構造を成すところに着地したのも美しかったと思います。(つまるところ、ロシアでネスキーの娘にお詫びを言って、NYのパメラに会いに行くまでの、2の結末の空白部分を埋める時間軸だけで完結してるという。そこはちょっとやられました。)
☆☆☆☆1/2
※さて今回のマクガフィンである「ブラック・ブライアー」が稟議のいらない現場主義の即断即決システムということだったら、ウチの職場でも導入してくれないかなぁ、という人は多いのではなかろうか。と思った。