虐殺器官(伊藤計劃)

 作者のブログに頻出する要素を見ていると、展開や結末はある程度予想される物語ではある。特に『セブン』でいうジョン・ドゥ的な在り方(それよりもっとそのものズバリの映画もあるけれど・・・)に対する憧憬などは、(ネットで批判が散見されるけれど、個人的にはありだと思った)MGSシリーズやモンティ・パイソンなどへのオマージュ(なっち翻訳文体まで!)以上に本質的な部分ではないだろうか。
 しかしそういうことはあまり問題じゃなくて、僕が感心したのは、とにかく「読みやすい」ということ。何なのだろうか、この読みやすさは。物語のドライブ感みたいな内容に関わる要素ではなくて、身体に浸透するような言葉本来の意味での「リーダビリティ」の高さ。小説のメンタルじゃなくてフィジカルの部分。
 ともあれ、作者自身の趣味性を外れた分野での長編第2作が読んでみたいと思ったことでした。
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