寺島しのぶと豊川悦司で映画化って、見る前からおなかがもたれるような面子だな。というか、セックスがらみのきわどい話の映画化って、最近は寺島しのぶがほとんど持っていってるような印象がある。なぜにそこまで・・・需要があるんすかねぇ。「きわどい話」の企画から帰納的にこの小説を選択したのではないかという気もして。それはさておき、そういう話だけど、そればかりの話という訳でもない。
「セックスにだらしない」と世間的にはされるような女性の日常を綴った物語。きわどいネタではあるけれど筆致が平熱で、それ故「こういう女の人のメンタリティってそんな感じかもしれない」と思わされるだけの説得力がある。自然体の日常描写はこの作者の武器で、『沖で待つ』の時もたいへん効果的だったように、いつの間にか猜疑心の外堀を埋められてしまう感じ。
イッツ・オンリー・トークというタイトルは、セックスのことを「その程度のもんでしょ」と言い切る主人公のハードボイルドなスタンスにも掛けてあるんだと思うけれど、そこは一人称叙述トリック(?)的に、本当の本心ではその程度のものとは思ってないよな、というヒネリでしょうか。いや本来の意味での語りに関するツイストもあるんだけどね。
ただ『沖で待つ』における「死者との会話」にも同じ種類の残念さを感じたのだけど、メンヘル友達のヤクザのヒットマンのくだりのように、悪い意味で「小説的な展開」が顔を出すんですね。全部平熱のテンションで押し切ればいいのになあ、と思ったことでしたよ。
☆☆☆1/2