ザ・シューター 極大射程(アントワン・フークワ)

 キアヌ主演で映画化進行中、のニュースが届いてから幾年月・・・ようやく完成した作品は?
 派手さはないがツボを心得たアクション、臨機応変さで絶体絶命の難所を潜り抜ける主人公、なかなか渋いセンスの映画だなぁと感心しているとデジャヴな印象が・・・『ボーン・アイデンティティ』だった。塩漬けになってた企画を「こりゃ映画になる!」と製作者が思ったきっかけは、ボーン・シリーズを観たからではなかろうかと思しい。それくらい作品の骨格は似通っていた。あえてマーク・ウォールバーグ(好演!)を主役にもってきたのもマット・デイモン風サル顔を狙ってたとしか思われない。
 ということは、それだけ原作からは離れている訳で・・・。まずライフルに対するフェティシズムがない(ジョジョでオマージュを捧げられてたほどだったのに)。それと狙撃それ自体の官能的な魔力、みたいなものも乏しい。(どっちかというと、お父さんみたいに白兵戦の人になっていた。)原作を読んだときは映画になりやすそうなネタだなと感じたものだったが、フィジカルなはずの狙撃の曰くいい難い魅力を語ろうとすると、映画よりも小説の方が向いているというのは興味深い逆説である。
 けれども、それさえ割り切れば、かなり興奮させられる展開。登場時は頼りない感じのFBIのニックがタフになっていくところも物語をドライブする上手いアレンジで、全体として脚色の方向転換は正解。予告編こそつまんない感じだったけど、実はあれにはいいところは全然登場してなくて、本編は最高。という組み合わせは『トゥモロー・ワールド』に匹敵するといっても過言じゃない、と思う。
 テーマについていうと、原作読者はご存知のとおり、S・ハンター作品はかなりタカ派の世界観ですが、それがオセロのように反転していく面白さが映画にはありました。
 ただヒロインがブスなところまでボーンを真似しなくてもね・・・
☆☆☆☆1/2