最も危険な場所(スティーブン・ハンター)

 『極大射程』の真に迫った射撃描写が大好きだった。フェティッシュな細部がなんというか辛抱たまらんくらい。(『ジョジョ』にも、もろ極大射程なシーンがありましたね。)それは映画的な描写でもあって、実際、本業が映画評論と知って納得。さらにキアヌ・リーブス主演で映画化されると聞いて、首を長くして待っていたんだけど例によって立ち消えになったらしい・・・と思ったらアントワン・フークア監督、マーク・ウォールバーグ主演で来年公開(『Shooter』)とのこと。よかったよかった。
 というわけで、極大射程の主人公ボブ・リーのお父さん、アール・スワガーが主人公の外伝(というかこちらも連作中なので、もはや外伝というよりサガか・・・)。陸の孤島で、この世の地獄と呼ばれる黒人専用の刑務農場ティーブズ。そこは白人看守が幅を利かせる、噂を超えた邪悪な町だった。自分の信念を貫くため、アールは第二次大戦の古強者6人と戦いに赴く。
 「最後のガンマン」「7人の侍」という定番要素がクリシェなんだけど(トートロジー?)問答無用に格好いい。理屈を超えてる。やっぱり『荒野の七人』『宇宙の七人』『ゴレンジャー』みたいな「7人もの」が繰り返し語られ、かつ受け入れられているというのは、物語の形式として相当な強度を持っているということだろう。
 ところで『プライベート・ライアン』『13ウォーリアーズ』なども「7人もの」の変奏である、という町山智浩の指摘を読んだことがある。たしかにキャラの性格の振り分けには頷けるものがあるのだが、しかしなんか物足りない・・・。その物足りなさをつらつら考えてみると、スカウトのシーンがごっそり抜け落ちてることに気づく。そうか俺はスカウトのシーンこそが好きだったのか!というか「スカウト」こそ「7人もの」のキモではなかろうか?「新命明、 君がアオレンジャーだ!!」と黒十字軍によるジェノサイドのサバイバーをスカウトして回る海城剛。もう辛抱たまらん・・・
 というわけでスカウト要素もバッチリなこの小説、僕にはど真ん中だった(後からよく考えると無理くりな依頼者の展開もなんだか許せるほどに)。上巻の我慢に我慢を重ねるストーリーも最後のカタルシスに一役買っている。
 最後にまじめな話。正直、人種問題に関してはギリギリボーダーというかグレイゾーンだと思われた。作者本人は銃の愛好家ではあるがリベラルとのことですが・・・
☆☆☆☆