彼岸過迄(夏目漱石)

 久しぶり(3度目)に読み返してみた。
 主人公(敬太郎)が就職先の斡旋を条件に探偵ごっこをさせられるところとか、堅気の人生から道を踏み外している隣人の話みたいな、ある意味どうでもいいパートが存外ボリュームがある。高校・大学時代に読んだときは(自分が青春ど真ん中だったこともあって)、もうひとりの主人公(須永)が血のつながらない従妹の千代子と結婚するのしないの三角関係だのに思い悩むパートが印象深くて、この小説の半分以上はその話に割かれているような記憶があったのだけど、今度読み返してみると意外とあっさりだった。
 しかも次のパートでは、須永の叔父がそのウジウジと思い悩む恋愛ドラマをつかまえて、「二人に聞けばいろいろなことをいうだろうが、それはその時限りの気分に制せられて、まことしやかに前後に通じない嘘を、永久の価値あるごとく話すのだと思えば間違いない」とあっさりひっくり返してしまう。そこらへん、気づかなかったなあ。
☆☆☆1/2