反対進化(エドモンド・ハミルトン)

 正しくSF。このSFとは「すこし・不思議」の意。

 因果関係からいうと、ここに収められているような「黄金時代のSF」へのオマージュから藤子・F・不二雄の諸作品が書かれたのだろうけれど、小説/マンガという媒体の違いを超えて、不思議と読後感までもが似ていた。たとえば「宇宙救命ボートで重力の低い星に飛ばされたら、のび太がスーパーヒーローに」というエピソードは『アンタレスの星のもとに』とアイディア自体がよく似ているし、『宇宙人』の主役の青年が古代の人類に向かって叫ぶシーンと『審判のあとで』の人類文化ライブラリーを未知の宇宙に向かって放つシーンの切なさは通底している。

 ただここでいいたかったのは、元ネタとして藤子がこれらの諸作品を知っていたかどうかという話ではなくて(実際アイディアとしてはポピュラーなものだし)、SFの在り方が複雑化してしまった現在ではいまさらこういったシンプルな世界観には戻れないだろうけど、センス・オブ・ワンダーみたいな大げさなものではなくても「すこし・不思議」という感覚はやっぱり大事にしてもらいたいものだな、ということです。
☆☆☆1/2