この作品を侮っていた。中クラスのサスペンスにしては頑張ってるほう、くらいのもんだと思ってた。すごく面白かったです。満点。
まず携帯電話という道具の弱点と利点を考えつくしたと思われる脚本が素晴らしく、良く練られてる。具体的には、建物の陰に入ると電波が弱くなるとかバッテリーの持続時間など。そういった「しばり」がサスペンスを醸成するわけで。それらが導入としての思いつきに留まらず、ちゃんと有機的に連鎖していく物語になっている。
それと近年珍しいくらいの尺の短さ。すごくタイトなつくりで、開巻直後のいきなり有無を言わせない誘拐に始まって、結末まであっという間。それでいて登場人物みんなにちゃんと見せ場があるという効率のよさ。素晴らしい!
ウイリアム・H・メイシー大活躍、という笑わせる「狙った」キャスティングがあるのだけど、意外やちゃんと格好いいのがまた素敵。彼の銃撃戦シーンで金魚鉢が砕ける音をフェイントにして大逆転というのがあって、まあ状況的に仕方ないけどちょっと金魚可哀相だったな・・・と思ってみてたら、後で救助に来た救急班に「これを頼む」ってビニール袋に入った金魚を渡すのです。実は上に挙げたポイントだけだったら4点かなーと思っていたんだけど、この時点で満点が確定した。
『ダイ・ハード』以降、「閉鎖空間(物理的、状況的)での危機的状況に平凡な主人公が一人で立ち向かう」、というパターンが雨後の筍のように作られ倒してきた訳だけれど、結局、爆発やアクションがより派手という拡大の方向に進んで、『ダイ・ハード』の何が面白かったのか、ということを制作側がちゃんと考えてこなかったのではないか(残念ながら「本家」すら)と常々思ってたのだが、ようやくそれに対する回答を見つけた気がした。本当にお奨めです。
☆☆☆☆☆