ボーン・スプレマシー(ポール・グリーングラス)

 ふらふらした手持ちカメラが鬱陶しい、と書こうと思ったのだが、世間で言われているほどでもなかった。確かに冒頭のマリーとのやりとりのシーンでの撮り方はちょっとやりすぎ感があって、最後までこんなだったら付き合いきれないなと思ったのだが、気になったのはこことあと数箇所くらい。元々前作のスタイルが同じようなリアル志向のカメラだったから違和感はない。

 相変わらずのストイックなアクションが心地よい。また刻々と変化していく状況を、混乱させずに観客に伝えるストーリーテリングの技術にも長けた作品である。派手に過激に、という方向で作られがちな続編ものであるが、前作の美点がどこにあったのかをよく心得た製作陣でよかったと思う。派手なキャストではないが、マット・デイモンははまってるし、エオメルでおなじみのカール・アーバンも最初彼とは気づかなかったくらい引き締まった殺し屋ぶり。でも一番気になったのは過去の標的の遺族役のオクサナ・アキンシナ。かわいい!!今後に注目ですな。

 ところで宿敵カルロスを欠いている時点で、原作とは異なる道を選択しているのは明らかなんだけど、思いつきとしか思われないような話の転がし方をしていた後期のボーンシリーズのことを思うとむしろ正解かも。しかしそれがモチベーションにしていた「愛する家族を守る」という点も今回で切り捨ててしまっているわけで、作られるといわれている3作目の核は何にするつもりだろうか。

 ところでテキパキしたアクションが大好きな僕であるが、この作品はその点も素晴らしかった。実に無駄のない流麗な動作で仕事を遂行していく描写は鳥肌が立つほど。ちなみに自分ランキングでの3本は、「ダイ・ハード」のナカトミ・ビル攻略、「SWAT」の人質解放、そして「ボーン・アイデンティティ」の一連のアクションである。今回は入国ゲートでの拘留から一瞬にして抜け出すシークエンスが最高に格好よかった。ちょっとカット割りすぎだけどね。

☆☆☆☆1/2