ヒューマン・キャッチャー(ビクター・サルヴァ)

 ヒットしたB級ホラーを同じ監督が手がけ、なおかつ違うタイプの作品として仕上げてきた。こういうのはありそうで、なかなかない展開なので嬉しい。

 前作は前半サイコスリラー風、後半(ジェイソン、フレディ等の系譜に連なる)ホラーヒーローものという変わったつくりの作品で(とはいえ前半戦と後半戦でスタイルが変わるジャンルムービーは、有名どころだと「フロム・ダスク・ティル・ドーン」みたいに探せばなくはないんだけど)、そのやり散らかし加減に賛否の分かれ目が集中していたように思う。

 一方続編への個人的な興味のポイントは、劇中流れる『ジーパー・クリーパーのうた』に特徴的だったように、マザーグース風の不条理残酷童話(謡)的なテイストにあった。加えて結末も後味の悪いもので、そういう意味では、流布していたイメージとは逆に全体としてのトーンは一貫していたといえる。とはいえ、やはりいろいろと反則チックな要素をはらんだ作品だったので、カルト作品になりこそすれ、よもや続編ができるとは思っていなかったのであった。

 これまた個人的には、こういうホラー、サスペンスの作品は主要な人物が何人死んでもかまわないが、少なくとも1人はサバイブしなければ観客に失礼ではないか、とも考えている。全員死ぬんだったら「結末まで見る」という行為のモチベーションを持ちようがないし、カタルシスもあったもんじゃない。(別の映画のネタバレだけど、「ファイナルデスティネーション2」はわざわざ前作の生き残りを主人公が引っ張り出しておいて、なおかつ殺されるという最悪の展開でがっかりさせられた。)だから「いやーな感じで終わる」という飛び道具は一度きりにしてほしかったのである。でもやっぱり見てしまったわけだが。

 ※「少なくとも1人は〜」の代表的な例のエイリアンシリーズは、観客の時間は1作目から4作目までかなり経っているが、リプリーの主観だと1年程の間に何度も何度もエイリアンに襲われている勘定になる。それでも生き残る気力を保ち続けているんだから、ものすごいポジティブな人ですね。閑話休題

 それで今作であるが、実際に観てみると「ジョーズ」みたいな「大自然の産物の叛乱もの」になっていた。スクールバスを利用した閉塞空間の演出は王道とはいえサスペンスの醸成が巧みだったし、主役であるバスケチームの学生たちの造形は、単なる作劇上の駒を超えてリアリティがあった。またエイハブ船長を思わせる復讐のオヤジは、登場場面はわずかながら一番おいしいところをさらって心憎い。そして「悪魔のいけにえ」を思わせる人体素材アートみたいなガジェットも健在。というわけで見る前の懸念は杞憂であった。また同じ監督で、かつさらに違ったジャンルで作ってみてほしいと思う。

☆☆☆1/2