読む前は、伝統的なハイファンタジーなのだとばかり思っていたのですが。
高尚で哲学的なことを語ったかと思うそばから、ものすごく俗っぽい人物描写があったり。泣かせにかかると見せかけて、シニカルなジョークを飛ばしたり。現代散文詩のような抽象的な描写が続く先に、ジャンル小説のような冒険があったり、というようにつかみどころがない。そんな不思議な感触がなんとも魅力的なのであった。
「ナンセンスでシニカル」というパッと読みの印象ではモンティ・パイソン風なのだが、60年代という時代を考えると(詳しくないので雰囲気だけでいっちゃうと)テリー・サザーンやリチャード・レスターの作品みたいなやっぱりビートニクカルチャーの影響下にある作品なんだなあという気がした。
ところで読んでいる時は、主人公である二人、魔術師のシュメンドリックはデビッド・シューリス、モリーはケイト・ブランシェットをイメージしていたのですが。今度映画化されるようで、その際のキャストはジョナサン・リース=マイヤーズ、ミア・ファロー。マイヤーズは若すぎるような・・・ともあれ、クールないつものスタイルじゃなくて「ベッカムに恋して」の時のような気さくな好青年風でお願いしたいものです。