ふたりジャネット

 ほぼ読了。
 20世紀SFに収録された「平ら山のてっぺん」がまさしくアメリカのよき伝統に則った作風で、20世紀SFのなかでも個人的にはベスト10に入るくらいのお気に入りだったのだが、この短編集を読むと、その系譜にあたるのは「熊が火を発見する」くらいで、かなり引き出しの多い作家であることが分かった。(SFマニアの方には周知の事実だったかもしれないですが。)

 ところで、作者紹介文では「現代のほら話」的作風をうたっているが、いかがなものか。その作風にぴったり当てはまるのは「万能中国人ウィルスン・ウー」のシリーズになるのだろうけど、ラファティのまがいものじみていて、あまり感心しなかった。(例えるなら、吉田戦車諸作の「伝染るんです」的側面の安いフォロワーとしてのユウジローの作品みたいな。)

 この短編集中でとくに素晴らしかったのは、作風からすると異色作品になるだろう「冥界飛行士」。盲目の芸術家が雇われた「あの世を写し取る」というプロジェクト。雇い主は最初から胡散臭さを漂わせていたが、その真の目的とは?皮膚感覚に直接訴えかけるような描写が後を引く。

 ミニマリスト全盛の米文学界の大物をゲストに、ミニマリストの方法論で描いた表題作も結構いい感じ。