2008-01-01から1年間の記事一覧

となり町戦争(三崎亜記)

ある日僕は町役場から「敵地偵察」の任を受ける。となり町との戦争が始まったのだという。実感はないが淡々と任務をこなす毎日。それでも自分の知らないところで死者の数は確実に増えていき・・・ 「直接手を下してないからといって、我々日本人は戦争と無関…

マッキントッシュ:ライダース・レザージャケット

こういう書き出しもどうかと思われますが、また分不相応な買い物をしてしまった。よく分からない何ものかに突き動かされて・・・(人はそれを物欲と呼ぶのでしょう)。ちょっと早いけどこの秋冬ものの買い物は打ち止めだなぁ。 マッキントッシュといえばゴム…

ポドロ島(L.P.ハートリー)

河出ミステリも渋いところ出してきましたね(和田誠のカバーがまた渋い)。最近の「異色作家叢書ブーム」あってこそだと思うけれど、こういう所謂通好みといわれる作家を、短編集というまとまった形で読めるのは本当にありがたいものです。加えて、訳者の今…

ディスタービア(D・J・カルーソ)

まあ『裏窓』オマージュ作品だと思うのだけど、訴えられちゃいましたね。逃亡監視の発信機にマニキュアでハートを書くのは、『裏窓』の「ギブスに落書き」のファンへの目配せかつ上手い本歌取りだなぁと感心したのだけど、そういう点も「ヒロインのお茶目さ…

デイ・ウォッチ(ティムール・ベクマンベトフ)

そういえばちょっと前に観てたんだった。とにかく最後のカタストロフのイメージが凄かった、という印象なのだけど、あまり豊かでない感じの庶民的な日常描写なども魅力的。異常現象と日常が断絶していないというその泥臭い地続き感覚が好きなので、変に洗練…

ウォンテッド(ティムール・ベクマンベトフ)

キレイはキタナイ、キタナイはキレイといった感じの美意識はこの映画でも健在だった。「こんな無茶な画が撮れたらスゲーだろうなぁ」という思い付きをとにかく映像にしてしまう、ということありきの監督なので、話としては破綻しているところもあるのだけど…

ペンギン・カフェ・オーケストラ-ベスト-

リアルタイムでは小学生だったので、今まで名前を聞いてもあまりピンとこなかったのだけど、これはいいですね。何か英国映画の劇伴みたいな感触。意外と前衛的な試みから構成されていたりする割りに、すごく聞きやすい。ブライアン・イーノのレーベル発とい…

ブラック・ジュース(マーゴ・ラナガン)

奇想コレクションから。オーストラリアのSF作家というと、ここしばらくはイーガンということになってた訳ですが、サイエンスというよりスプロール・フィクションの方のSF作家ですね。最近ではストレンジ・フィクションっていうのかな。まあジャンル分類…

ループウィラー:スリムフィット・ジップパーカー

昨年その存在に気づいた時には欲しいサイズがばっちり売り切れていて、他店も同様なので来年まで待ってください、と言われ幾年月(まあ1年なんだけど)、ようやくゲットだぜ。グレーのサイズM、君に決めた!(今さらサトシくん風に) 前に書いたとおり、ポ…

魔王(伊坂幸太郎) 

しがない会社員安藤は、ある日、自分が他人に自由にものを喋らせる特殊能力の持ち主であることに気づく。そんな折、マスコミでは外交問題で他国に断固たる態度で臨み、憲法第9条改正を唱える若き政治家犬養がその存在感を増していた。劇場型政治の波に乗り、…

アドレナリン(ネヴェルダイン/テイラー)

またぞろ『トランスポーター』系のアクションかと思ってたら、周囲に迷惑かける系コメディ(「ピンク・パンサー」みたいな)だったのね。ちょっとキレは悪かったけど・・・ ☆☆1/2

大酔侠(キン・フー)

なるほど『グリーン・ディスティニー』がキン・フー監督リスペクト映画だったというのが良く分かる。旅籠の乱闘や闇夜の追跡劇など直接的なイメージの引用も多かったし、なによりチェン・ペイペイ演じる美少女剣士の可憐さが!(それが後のジェイド・フォッ…

まぼろしの市街戦(フィリップ・ド・ブロカ)

第一次世界大戦下のフランスの小さな町。撤退するドイツ軍の仕掛けた時限爆弾のため、住民はみな退避するが、混乱のどさくさで精神病院の患者達が解放される。思い思いに着飾った彼らのため、町はさながらカーニバルの様相。爆弾撤去に送り込まれた伝書鳩係…

ブランディング?

液体洗剤のアタックが「バイオジェル」になってから蛍光剤配合になってたんだけど(ということに今気付いたんだけど)、これって結構なトラップではなかろうか?無配合と思ってわざわざ銘柄を選んでたのに。

ノーカントリー(コーエン兄弟)

とにかくディテールの豊かさに驚かされる。それともちろん殺伐とした展開と結末にも。そういう意味で「観終わった後に、何か感想を書いておきたくなる力」に溢れた映画だと思います。 とはいえ、さんざん語られ尽くしている感もあるので、「どんな映画からも…

ザ・ヒットマン(エリク・ヴァン・ローイ)

ブロックバスター系の作品が公開される直前には、決まって「パチ・パッケージ作品」がDVDレンタルの棚に並ぶものだけど、なんだか安っぽいし、出演者・監督の名前も違うのに引っ掛かるようなうっかりさんっているのかしらん?・・・俺だー!! いやー今回…

ホームズもの

ウィル・フェレル:ワトソン、サシャ・バロン・コーエン:ホームズの『タラデガ』コンビ、製作での企画が動いてるそうで。こりゃ期待大。ところが「コロンブスもの」や「利休もの」の時みたいにロバート・ダウニーJr.主演の企画もあるのだそうで。方向性が違…

限りなき夏(クリストファー・プリースト)

プリーストの作品はSF、ファンタジー、あるいはホラーの意匠をまとっていても、単なるそれらの組み合わせを超えた感興が呼び起こされるところがツボなんだと思っていて。それはSFの秀作を評してよく言われるところの「センス・オブ・ワンダー」というの…

真夜中に捨てられる靴(デイヴィッド・マレル)

ランボーこと『一人だけの軍隊』で知られるマレルのホラー・SFの短編集。いまアマゾンを見たら、ランボーの2,3作目のノヴェライズも手掛けてたんですね。「最後の戦場」をどう観たか気になるな・・・ ところで、「自らの体験を掘り下げて作品を作るタイ…

天国の口、終りの楽園。(アルフォンソ・キュアロン)

この監督の作品を初めて見たのは『大いなる遺産』だったのだけど、その時は暴力的に物語に進入してくるエロの要素にかなり戸惑って、かえって印象深かった記憶があります。その後この作品はスルーして、『アズカバンの囚人』がハリーのシリーズとしては今に…

Koop Islands(Koop)

前作にもあったラウンジ・スウィングの要素をより前面に押し出したような作り。なんか両大戦間期のサロンのような佇まいの曲もあったりして、そこまで先祖がえりしたかぁ、という印象もあるのですが、前作のようなジャンルの潮流を変えるような独自性や孤高…

ヒトラーの贋札(シュテファン・ルツォヴィツキー)

第二次大戦末期、ナチスは敵国の経済混乱を目的として、大量の偽札を印刷する作戦を企画した。集められたユダヤ人技術者たち。完成しなければ、容赦ない死が待っている。果たして彼らは終戦まで生き残れるのか?・・・ この作品はオーストリア・ドイツ合作な…

魔法にかけられて(ケヴィン・リマ)

娘を懐柔するプレゼントに「えらい人の本」をチョイスするセンスって、のび太のパパ並だな。 それはさておき、この映画は「異世界から常識はずれのピュアな心を持つ人物がやってきて、主人公たちが振り回されるけど、そのおかげでいつしか忘れていた真心を思…

運命じゃない人(内田けんじ)

相当面白かった。評判を聞いて構えていたけど、それでも面白かった。噂どおり脚本は隙のない構成で本当に素晴らしかったし、(地味だけど)それを受ける役者さんがよかったから、ということも書いておかねば。野郎の友情が泣かせます。 ☆☆☆☆☆

夏の涯ての島(イアン・R・マクラウド)

藤子・F・不二雄のSF短篇ものは、年齢を重ねるにつれ、受け入れなければならない「あきらめ」みたいな諦念が裏テーマにあるものが意外と多く、藤子Ⓐのような一読したときのインパクト勝負でない分、後からボディブローのように効いてくることに大人になっ…

悪夢探偵(塚本晋也)

タイトルのイメージ喚起力につきるというか。ただキャスティングから想像されるような『ヒルコ』や『双生児』などの塚本メジャー路線という感じでもなかったですね。 クライマックス、「俺と一緒に遊ぼうぜぇぇ!」と塚本監督演じるゼロ(というか所謂「ヤツ…

宝石泥棒(山田正紀)

『世界の怪獣大百科』※1という本をご存知だろうか?これは『全怪獣怪人大百科』で有名なケイブンシャの大百科シリーズの一冊で、そのワールドワイド版とでもいうべきものだった。ソースは特撮映画はもちろん、小説、UMAと何でもありのいい意味で無茶な本で…

いのちのパレード(恩田陸)

「異色作家短篇集」カヴァーアルバム的なコンセプトのもと書かれた短編集。なので恩田初心者(私)向けショーケースとしてはもってこいなのかも。ただ、きっちりお話としてまとめる手腕と作品ごとの振幅の広さには感心させられるものの、ウェルメイドである…

ダークナイト(クリストファー・ノーラン)

『香港国際警察NEW POLICE STORY』のリメイクかと思ったよ・・・ 。良かったところはいろんな所で書かれているから、以下気になった点を幾つか。 ・おそらく最大の見所である「ヒース・レジャーの文字通り命を削った鬼気迫る演技」は、曲者役…

ブリュンヒルデ

TVCMでも流れているので、もう解禁ということで。実は『ポニョ』における個人的な一番のサプライズは、「可愛らしい女の子に変身する」という点だった。開巻当初から「人面魚と5歳の男の子のラブストーリーなんて最後まで付いていけるかしら・・・」と…