2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

限りなき夏(クリストファー・プリースト)

プリーストの作品はSF、ファンタジー、あるいはホラーの意匠をまとっていても、単なるそれらの組み合わせを超えた感興が呼び起こされるところがツボなんだと思っていて。それはSFの秀作を評してよく言われるところの「センス・オブ・ワンダー」というの…

真夜中に捨てられる靴(デイヴィッド・マレル)

ランボーこと『一人だけの軍隊』で知られるマレルのホラー・SFの短編集。いまアマゾンを見たら、ランボーの2,3作目のノヴェライズも手掛けてたんですね。「最後の戦場」をどう観たか気になるな・・・ ところで、「自らの体験を掘り下げて作品を作るタイ…

天国の口、終りの楽園。(アルフォンソ・キュアロン)

この監督の作品を初めて見たのは『大いなる遺産』だったのだけど、その時は暴力的に物語に進入してくるエロの要素にかなり戸惑って、かえって印象深かった記憶があります。その後この作品はスルーして、『アズカバンの囚人』がハリーのシリーズとしては今に…

Koop Islands(Koop)

前作にもあったラウンジ・スウィングの要素をより前面に押し出したような作り。なんか両大戦間期のサロンのような佇まいの曲もあったりして、そこまで先祖がえりしたかぁ、という印象もあるのですが、前作のようなジャンルの潮流を変えるような独自性や孤高…

ヒトラーの贋札(シュテファン・ルツォヴィツキー)

第二次大戦末期、ナチスは敵国の経済混乱を目的として、大量の偽札を印刷する作戦を企画した。集められたユダヤ人技術者たち。完成しなければ、容赦ない死が待っている。果たして彼らは終戦まで生き残れるのか?・・・ この作品はオーストリア・ドイツ合作な…

魔法にかけられて(ケヴィン・リマ)

娘を懐柔するプレゼントに「えらい人の本」をチョイスするセンスって、のび太のパパ並だな。 それはさておき、この映画は「異世界から常識はずれのピュアな心を持つ人物がやってきて、主人公たちが振り回されるけど、そのおかげでいつしか忘れていた真心を思…

運命じゃない人(内田けんじ)

相当面白かった。評判を聞いて構えていたけど、それでも面白かった。噂どおり脚本は隙のない構成で本当に素晴らしかったし、(地味だけど)それを受ける役者さんがよかったから、ということも書いておかねば。野郎の友情が泣かせます。 ☆☆☆☆☆

夏の涯ての島(イアン・R・マクラウド)

藤子・F・不二雄のSF短篇ものは、年齢を重ねるにつれ、受け入れなければならない「あきらめ」みたいな諦念が裏テーマにあるものが意外と多く、藤子Ⓐのような一読したときのインパクト勝負でない分、後からボディブローのように効いてくることに大人になっ…

悪夢探偵(塚本晋也)

タイトルのイメージ喚起力につきるというか。ただキャスティングから想像されるような『ヒルコ』や『双生児』などの塚本メジャー路線という感じでもなかったですね。 クライマックス、「俺と一緒に遊ぼうぜぇぇ!」と塚本監督演じるゼロ(というか所謂「ヤツ…

宝石泥棒(山田正紀)

『世界の怪獣大百科』※1という本をご存知だろうか?これは『全怪獣怪人大百科』で有名なケイブンシャの大百科シリーズの一冊で、そのワールドワイド版とでもいうべきものだった。ソースは特撮映画はもちろん、小説、UMAと何でもありのいい意味で無茶な本で…

いのちのパレード(恩田陸)

「異色作家短篇集」カヴァーアルバム的なコンセプトのもと書かれた短編集。なので恩田初心者(私)向けショーケースとしてはもってこいなのかも。ただ、きっちりお話としてまとめる手腕と作品ごとの振幅の広さには感心させられるものの、ウェルメイドである…

ダークナイト(クリストファー・ノーラン)

『香港国際警察NEW POLICE STORY』のリメイクかと思ったよ・・・ 。良かったところはいろんな所で書かれているから、以下気になった点を幾つか。 ・おそらく最大の見所である「ヒース・レジャーの文字通り命を削った鬼気迫る演技」は、曲者役…

ブリュンヒルデ

TVCMでも流れているので、もう解禁ということで。実は『ポニョ』における個人的な一番のサプライズは、「可愛らしい女の子に変身する」という点だった。開巻当初から「人面魚と5歳の男の子のラブストーリーなんて最後まで付いていけるかしら・・・」と…

パルス(ジム・ソンゼロ)

『回路』は「この世ならざるもの」の空気をいかにして映画に取り込むか、が見所でした。だから主体である幽霊のアクションではなく、むしろそれに対する人間のリアクション(「パソコンのシミュレーション」「赤いビニールテープ」)に腐心していた訳で。 と…

フリージア(熊切和嘉)

翼賛体制のような近未来の戦時下の日本。そこでは「敵討ち法」という法律が施行され、凶悪犯罪の被害者遺族が加害者に復讐をすることが法的に許されていた。原作読者はよくご存知のように、舞台は一種の「ディストピアもの」。そしてこのジャンルが常にそう…

カンフー・パンダ(ジョン・スティーブンソン、マーク・オズボーン)

初期ジャッキーイズム溢れる快作でした。「昼休みに廊下で少林寺木人拳ごっこ」が共通体験の世代としては「役に立つのか分からない修行」と「飯を巡っての師匠との箸バトル」の完コピぶりに感涙。 ☆☆☆1/2