2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

なめくじに聞いてみろ(都筑道夫)

『殺人狂時代』が好きすぎてDVDを購入。すると原作も気になってきたので読んでみました。 殺人方法考案の天才だった父を持つ青年、桔梗信治。彼は父が通信教育で殺し屋を育成していたことを知り、その負の遺産を清算するために出羽の山中から東京へと赴い…

パラダイス・ナウ(ハニ・アブ・アサド)

ネタバレあり。 自動車修理工として働く幼馴染のふたり。ある日かれらに作戦の指令が出される。それは明日、テルアビブにおいて自爆攻撃を決行するというものだった・・・ ヒロインである「英雄」の娘が暴力=自爆以外の解決の方法を模索し、イスラエルへの…

99999【ナインズ】(デイヴィッド・ベニオフ)

映画ファンには『25時』の原作・脚色、『トロイ』脚本、SF者には『エンダーのゲーム』脚色の人として知られているであろう作者。コッポラ主催のゾエトロープという文芸誌に寄稿していた作家なので、映画とのゆかりは元々深いと言えるかも知れません。そ…

パプリカ(今敏)

今監督は、やっぱり良くも悪くも破綻をよしとしない人なんだと改めて思いました。 ところで創作物全般にいえることだけど、批評の場では「規範を逸脱するような突出した要素」をもって高く評価するような傾向や風潮があると思うのだけど(いびつさをこそ愛で…

カーラの狼<ダーク・タワーV>(スティーブン・キング)

今まで気付かなかったのが本当に迂闊。このシリーズの下敷き(まあキング自身が言及するように、いっぱいあるんですが)にしている物語の一つは『指輪物語』なんですね。心身供に重荷となる水晶球の存在とか、そこから覗いてくるクリムゾン・キングとか。そ…

合衆国最後の日(ロバート・アルドリッチ)

ケヴィン・スペイシーの出ていた『交渉人』は、頭脳戦を謳っていながら最後の方はアクションの力業でグダグダになって非常に失望させられたものだったけれど(予告編にもあった、一方的に電話を切って、「また掛けて来る」と断言するシーンだけが格好よかっ…

殺しの烙印(鈴木清順)

「そういう映画」だと分かってて観ないと、正直あっけにとられると思う。 ルパン3世がこの作品と『殺人狂時代』の影響を受けて作られたと知って、映画ファンとしては今更ながら観たわけなんですが、全編アンチクライマックスというか、本当にシュール。あと…

わたしたちが孤児だったころ(カズオ・イシグロ)

タイトルに「孤児」とあるように、アイデンティティにまつわる物語でかつ箱庭感覚の世界観、となるとディックを連想するかもしれないけれど(僕だけかな?)、共通の要素はあるのにテイストは全く違う。 全体としてはむしろディケンズ的なクラシックな「物語…

アメリカン・ギャングスター(リドリー・スコット)

ギャングもの、捜査官もの、のおいしいところだけ(登りつめるまで、追い詰めるまで)でできている映画だから面白くないわけがない。そしてやはり面白かった・・・栄華を極めたら後は崩壊を描くしかない訳で(しかもそれは蛇足になることが多い)。実に巧み…

クラッシュ(デヴィッド・クローネンバーグ)

『ヴィデオ・ドローム』や『戦慄の絆』みたいに観念的すぎて眠くなるほうの監督作品でしたね(キャッチーな方の代表作は『ザ・フライ』)。 「世間的には理解しがたい信念や欲望にのめり込んで破滅していく主人公」というのはクローネンバーグが好んで描くタ…