ミッドナイト・ランナー(キム・ジュファン)

 いわゆる新兵ものですね。好きなジャンルだけど、今作は物語のために話運びが乱暴なところが散見されてウームとなりました。(いくらなんでもあんな凶悪犯罪なら警察も動くのでは?。)

 あとこのジャンルなら必要な、主人公たちのロールモデルとなる先達(プラトーンならウィレム・デフォータイガーランドならコリン・ファレル)がいないのも物足りなかった。(教官もこれっていいこと言ってるのかな…という感じだし。)全体的には面白かったんだけどなあ。

☆☆☆

ザ・ブルード 怒りのメタファー(デヴィッド・クローネンバーグ)

 メタファーってなんやねん、格好つけた邦題が逆に格好悪いぜ…と思っていた時期が私にもありました。もう本当に文字通り「怒りのメタファー」の話だったんですね。しかしクローネンバーグって最初の頃からこんなに気持ち悪い映画ばっかり作っていたんだな。(しかも背景を知ると公私混同も甚だしい。びびる。)

☆☆☆1/2

ヒッチャー(ロバート・ハーモン)

 多分30年以上ぶりに観返したけど、やっぱり怖かった。付きまとわれる理由が分からない。不条理すぎる行動原理。なんというか、いつか見た悪夢の感触があるというか。

 ところで、「ドアーズの曲にインスパイアされて」という脚本家の弁があるけれど、率直に言って「バッティが普通の人を追い掛け回したらすごく恐ろしいんじゃないかな…」という思いつきだったんじゃないかな。あとルックといい音楽と言いザ80年代作品なんだけど、改めて見ると、警察のしつこさ主人公たちの無力さにはニューシネマの残響を感じました。

 物語を転がさんために「え?それでいいの?」となる要素が多く、いくらなんでも警察が無能に描かれすぎで。しかしながらルトガー・ハウアーの存在感に全てねじ伏せられてしまう印象でした。

☆☆☆1/2

SING/シング(ガース・ジェニングス)

 歌の力を感じる映画でした。ちょっとずるいなとも思うけど、その歌のポテンシャルを最大限引き出す演出が的確にされていればこそですもんね。ブタのこどもたちが可愛らしかったな。

☆☆☆1/2

アメリカン・ユートピア(スパイク・リー)

 総じて演者のレベルが素晴らしいのですが、冒頭のタンバリンの人がすごいなと思いました。なんだかモダンダンスのダンスカンパニーの公演のような雰囲気。

 それと80年代の楽曲はおしなべてそういう感じだけど、デヴィッド・バーンの歌って初めてちゃんと聞いたらデヴィッド・ボウイ的だなと思いました。

☆☆☆1/2

Mr.ノーバディ(イリヤ・ナイシュラー)

 最高でした。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の『ジョン・ウィック』風味という感じかな。娯楽作はこれくらいタイトな方がいいですね。『ジョン・ウィック』は真顔ですっとぼけたことするのが面白かったのに、どんどん格好つけた方向に舵を切ったからそっちじゃないのにな…と思っていたので、思わぬプレゼントでした。※

☆☆☆☆1/2

※87イレブン関係者が製作しているので。

ロング・ウェイ・ノース(レミ・シャイエ)

 僕の偏愛するTVドラマシリーズに「ザ・テラー」という英国海軍の北極探検の史実に題材をとったものがあるのですが、一応超常現象的モンスターも登場するのだけど、その核心は極限状況での相互不信で組織が崩壊していく過程にありました。(本当にダウナーな物語なので元気がある時のみお薦めです。トラウマになりますよ…そこがいいんだけど。)

 さて、この映画の題材もかなり似ているけれど、その主題は(アートアニメ的な意匠もさることながら)多分「瑞々しい感性で新しい世界を切り開いていく女の子」にあるのだろうなと予想していたので、まさか「あんな感じ」にはなるまいと思っていた、そのまさかに接近していくのでちょっとドキドキしましたが、結果的にはデウスエクスマキナ的にいい案配になるのでひと安心。でも「あんな感じ」はいらなかったんじゃないかな、とも思いました。

☆☆☆1/2