未来の想い出(森田芳光)

 びっくりするぐらい普通というか、え?これで終わり?と思ってしまいました。(映画館で予告編を観て「トレンディドラマ」風の感じだなあ、そういう職人監督になっていくのかな、と思った記憶があるのだけど、もう30年も前の映画なんですね…)やはり森田作品は尖った題材に特異な演出、みたいな方が輝いている気がする。(もしくは『間宮兄弟』みたいに大きな起伏がないもの。)

☆☆1/2

フランシス・ハ(ノア・バームバック)

 過去を顧みて身につまされすぎて居たたまれなくなる感じありました。でも「そのままのきみでいい」って言ってるわけじゃないと思う。(そうじゃなくなったからこその結末だと思うので。)

 グレタ・ガーウィグさすがだなと思いました。なるほど今の活躍があるわけですね。あとアダム・ドライバーこの頃から光ってましたね!

 でも、場面を見ているだけで「何となく持ってしまう」ってほどではなかったかな。

☆☆☆

※ATMを探しに行くちょっとスラップスティックなところ、『僕のおじさん』っぽくなかった?(音楽のせい?)

22年目の告白 -私が殺人犯です-(入江悠)

 オリジナルが予想外に面白かったのだけど、あちらは監督がスタントマンの経験があったり※というように、また2作目の『悪女』で明らかになったように、誰も見たことがないアクションを見せてみたい、ということが中心軸にあるのであって、テーマとか物語上のツイストは付加要素にすぎなかったんですよね(それがあったからすごく成功したというのは間違いないところだけど)。

 翻ってこのリメイク版ですが、テーマやツイストに重きを置きすぎて、いやそこまで深刻な社会派風を押し出されても…ということになってしまっていたような。オリジナルはサービスの過剰さ、エクストリームさが笑っちゃうくらいのバランスで、いい意味で変な映画だな、というのが良さだったわけだから。でもオリジナルを知らないまま見たら「そうきたか!」と楽しめたのかも。

☆☆☆

※とはいえ、自身が語っているように映画を作りたいという思いがまずありきで、アクションはあくまでその選択肢のひとつだったみたいですね。

続・用心棒(デイヴィッド・ゴードン)

 いろんな要素をそつなくまとめてる感じだったけど、そつがないだけというか。これはこの作品に限らず、最近のエンターテインメント小説にはよく感じる。自分がこういったジャンルに慣れてしまったせいか?とも思うのだけど、『深夜プラス1』とか『北壁の死闘』みたいな純エンターテインメント分野の過去の名作を改めて読むと変わらずグッとくるので、やはり作家の力量なんだろうな。

☆☆☆1/2

シャン・チー(デスティン・ダニエル・クレットン)

 悪の化身と善なるゲートキーパーがふとしたことから結婚して主人公が誕生しました、って鉄拳のハリウッド映画化か※!と思いました。

 ・というか、ジャッキー映画と武侠もののいいとこどりだった感じ。見慣れてない人(欧米の一般の観客)には新鮮だったかもしれないけれど。

 ・ショーンが働いていたフェアモントホテル(サンフランシスコにも実際ある)は一種のプロダクトプレイスメントだと思うけど、駐車係があんな無茶をするところっていうマイナスイメージにならないのか他人事ながら心配になりました。

 ・千年もの間国家を相手に暗躍してきたっていうから、テンリングスって人里離れた山奥にあるのかと思いきや、ヤクザのオッサンたちがふつうに上がり込んできたから、あれ?ってなったよね…(あそこの一連のやりとりだけ急に香港映画でしたけど、世界観が矮小化されるから微妙だったかな。)

 ・変面というか京劇みたいな人、思わせぶりに出てくるからギリギリまでお母さんだと思ってた…(どういう無茶な理由をつけるのかなって期待してた…)

 ・龍は乗り物じゃないんだから労ってあげてほしかったですね。

☆☆☆1/2

※既にあるんだけど。

ドラッグウォー 毒戦(ジョニー・トー)

 韓国のリメイクの出来があまりによかったので、オリジナルを改めて見たくなったのだけど、アマゾンプライムで復活していたので再見。

 一言でいうと身も蓋もない映画ですよね。ドカンと放り出すようにして、素材を味わってくださいというような。元々監督の映画では体制側を描くときは情というよりマシーンのように目的を遂行する(時には常軌を逸して)という感じだけど、犯罪者側は「法の埒外を生きる者の矜持」を描く印象があって、今作では麻薬工場主の聾唖の兄弟が正にそんな雰囲気でした。

 シャワーを浴びるときも防弾ジャケットを着用している、というディテールは普通に考えたらそんな馬鹿なという話なんだけど、常に「いざという時に備えている」、そして24時間365日がいざという時である、という犯罪者の日常にそのカット1つでこれ以上ないほどの説得力を持たせているんですよね。そういえばリメイク版でも同じキャラクター達が実に魅力的でした。

 ☆☆☆1/2

ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語(グレタ・ガーウィグ)

 話全然忘れてたことにびっくりしました。映画もアニメも見てたはずなのに…それはさておき、時制の行き来など新しい語り口でスタンダードな物語を語り直す、というのが眼目だったと思うけれど、やっぱりこういう話はオールドスクールな作りでよかったのでは、という気もして。でもそれだとグレタ・ガーウィグが撮る意味ないしなあ。

ローラ・ダーンの良妻賢母ぶりが板についていて、『ブルーベルベット』から随分遠くに来たよなあという感慨が。

・フローレンス・ピューは少女時代はすごくあどけない感じがするのに、渡欧してからは自立した淑女の印象でとても感心しました。

・ベスのエピソードはあまりにやっつけな感じがしなかっただろうか?

・ベア先生の最新型のイケメンぶりがすごかった。今時のハンサムガイってこんな感じでしょ、と言外に言われてる感じ。

メリル・ストリープ演じる伯母が辛辣なことをいうけどチャーミングでさすがだなとしかいいようがなかったですね。『クレイマー、クレイマー』※から随分遠くに来たよなあという感慨が。

 ジョーは原作者の分身なのでどうしても物語の中心になるけれど、監督の想いを仮託された存在でもあるので、テーマを直接的に語りすぎるきらいがありましたね。演出に生硬さがあるので、率直なところ、ちょっとスパイク・ジョーンズに近い「眠さ」を感じました。全体としてはナイストライだったかな。

☆☆☆1/2

※原題はKramer vs. Kramerなんですよね。なんか雰囲気で2回呼びかけてるのかなって小さい頃は思ってたけど。