アラジン(ガイ・リッチー)

 期待してなかったけど面白かったよ、という声を公開時に聞いてたけど、ちゃんとミュージカルとしての楽しさがあって本当に面白かったですね。(山ちゃんの部分だけは吹き替えが勝ってた印象。)

 ところでジーニーのハイテンションぶりが『マスク』みたいだった※。CG技術が発達した分、カートゥーンの実写再現が大盛になった感じというか。

 それと、映画の『イエスタデイ』じゃないけれど、大げさにいうと我々は既に「A WHOLE NEW WORLD」が存在する世界に生きているので、正直聞き飽きた感があったのだけれど、初めて映画館でアニメの『アラジン』を観たとき「Trust Me?」から始まる一連の流れにときめきを感じたのをすごく久しぶりに思い出して、なんだか胸にこみ上げるものがありました。

☆☆☆1/2

ガイ・リッチーということをつい忘れちゃいますね。

ジム・キャリーの吹き替えが山ちゃんなのもあるかも。

※ところでダンスがアラビアというよりインドみたいだったのはよかったのかな…

ナイブズ・アウト(ライアン・ジョンソン)

 『名探偵登場』とか『デストラップ』みたいな70年代ミステリ映画※の匂いがしてすごく好きだった。(タイトルフォントが正にそんな感じなんですよね。)TVの洋画劇場で親と見ていた思いでが甦るような…

 それにしても、端正で精緻な脚本とすっきりした撮り方をしていて、あのクセだらけの映画を作っていた監督とは思えないなという感想です。題材に合わせればちゃんと作って見せますよ!という表明のようでもありますね。

☆☆☆☆

※1 正確には『デストラップ』は80年代映画だけど。

※2 後から気づいたのだけど、最後の最後のひと騒動、冒頭のハーランとマルタのやり取り「あいつは本物の何たるかを知らん!」という形で伏線が張ってあったんですね。エピソードを提示するタイミングとか、人物の出し入れとか、もろもろ脚本が本当に緻密で素晴らしい。

レディ・ガイ(ウォルター・ヒル)

 ウォルター・ヒルこんなところで何やってんの?と一瞬思ったけれど、傑作じゃないにせよ、期待する方向性を間違えなければまずまず面白い映画ではなかろうか。要は舞台建ての違う「あのスペイン映画」ですよね。(ネタバレになるから書けないけど。)奇妙なテイスト系というか。しみじみしていて悪くない。

☆☆☆

※1 あとジョニーも元男性というオチだと思った。

※2 原題のThe Assignmentの方がいろいろ含みを持たせていてよかったのでは、と思いました。邦題は出オチのバカアクション風だからそういう作品かと思っちゃった。

美女と野獣(ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイズ)

 娘が絵本だけじゃなくて映画も見たいというので、劇場で観て以来久しぶりに。もう30年になるのか…いわゆるディズニー・ルネサンス期に位置づけられる作品群の中では一番好きですね。

 本当に全編にわたって魔法がかかっているような作品で、登場キャラクターに感情移入して、といった言語化できる理由ではない何かに心打たれて、二人だけの舞踏会のシーンでは涙があふれてきました。(そういえば映画館で観たときもそうだった、と思い出した。)

 何か、人間になる前の方が格好良かったね等々、子どもたちといろいろ話せたのも良かったです。

☆☆☆☆☆

※今回スペシャル・エディションで見たのですが、「人間に戻りたい」ってパートは記憶にないな、と思ったらここが拡張部分なんですね。確かにお城の皆にしてみればもっともな願いなんだけど、簡潔無比な語り口が素晴らしかったオリジナルと比べると、冗長というか今言わなくても…という気が。

※時計の執事コグスワースの振る舞いと描写がことごとくドラえもんみたいなんですが、というか、東映動画経由でディズニーの系譜としてたどり着いたのがドラえもんだったということですよね。

ビバリーヒルズ・コップ2(トニー・スコット)

 この頃のトニー・スコットは「とにかく派手なだけで中身がスカスカ」と批判されていましたが、久しぶりに見てみたら本当に「派手なだけで中身がスカスカ」だったからびっくりしました。

 当時映画館(やその後TVで)で観たときは全然気にならなかったんだけど、80年代のアクションは大体どれもそんな感じだったからなんだろうなあ…(今パロディで80年代アクション風の作品が作られたりしてるけど、実際まんまそんな感じだからパロディですらないっていうね。)

 続けて見たから分かりやすかったのですが、権威はないけど創意工夫でなんとかする、とか人情の機微、といった1作目のしみじみとした良さがことごとく損なわれていたのが残念でした。これは監督ばかりに責めを帰するわけにはいかないと思ったのが、ストーリー:エディ・マーフィとなっていたから、フェラーリに乗ってることにしようぜ、とかボゴミルの娘(1作目いなかったのに…)といい感じにしてくれとか的外れな要素はいろいろ口出ししたからじゃないかな…でもまあ、ABC強盗とか犯行予告暗号※とか、カスタム銃弾を使用とか、犯人側にメリットがない展開って根本的に脚本上の問題だもんな。

 ともあれ、細かいことを言わなければ時代の記録としては悪くない。のかもしれませんね。

☆☆☆

※ケインひとりに罪をかぶせる工作という理屈はあるものの、迂遠すぎるだろ…

オーシャンズ8(ゲイリー・ロス)

 『オーシャンズ11』のシリーズというのは、恰好いいっぽい、お洒落っぽい、イケてるっぽいという「っぽい」に特化した映画だった訳ですが、あれはセリフの呼吸とか編集とか、監督のセンスに拠るところが大きくて、その点この映画では鈍重な感じが否めませんでした。コンゲームものとしてはまあ面白いのだけど、なんかオシャレじゃないんですよね…

☆☆☆

歌え!ロレッタ愛のために(マイケル・アプテッド)

 シシー・スペイセクがこれでアカデミー賞を取ったということだけ知っていたのですが、納得の演技。年齢の幅と歌がすごい。

 一方、個人的には凡庸な職人監督というイメージのマイケル・アプテッド出世作という切り口でも一応知っていたのですが、ドキュメンタリーの「UP」の制作者という観点でみると、起用も腑に落ちました。(ところで先日続編をNHKで放送していましたが、素晴らしかったですね。)

 という訳で、実は実在のカントリー歌手の半生を描いた作品と知らなくて(ちなみに僕がタイトルから想像していた物語は、西部劇か犯罪もので、銀行強盗に対抗するために何か歌わなきゃいけないようなシチュエーションになるの…)、初めて見てああこういう映画だったんだと思った次第。ちょっと裏『ディア・ハンター』的な要素もあって、タイトルも相まってニューシネマっぽい感じ。こういう場所で一生を終えるという人生もあるんだな。この作品では出ていくことができたけれど。

☆☆☆1/2