ビバリーヒルズ・コップ(マーティン・ブレスト)

 冒頭、例の軽快なテーマ曲が流れるんだけど、それでもごまかしきれない荒んだデトロイトの現状がドキュメンタリー風に撮られてて、あれこんなだったっけ?とまず思ったのですが、その後で事件の発端となる古い悪友の帰郷が描かれると、ああ『ムーンライト』的なバックグラウンドがあったのか、忘れてた…となりました。

 最初のクラッシュシーンこそ派手だけど、総じてアクションは控えめで、そういえば映画というものが今みたいに複数の制作会社が名を連ねないと作れないような大規模な博打みたいじゃなかった頃はそうだったよね、と80年代アクションを思い出したり。

 口八丁手八丁のエディ・マーフィの勢いで作られたような気がしていたけれど、見返して見ると意外とかっちり構築された刑事ものでした。そしてちゃんと面白かったです。

☆☆☆1/2

フッド:ザ・ビギニング(オットー・バサースト)

 アクションは頑張っていたけれど、脚本がガタガタだったのが残念でした。そもそも悪役たちの「アラビア軍に資金提供」という策略の目的が全然わからない。(な、なんだってー!っていう意外性以外に必然性がなさすぎではないでしょうか…そもそも「アラビア軍」という設定もよく分からないけれど。)

 物語自体はかなりケビン・コスナー版を意識してたのかな(僕は佳作だと思っているのですが)。盟友となるジョンの設定は完全にモーガン・フリーマンだったもんな…

☆☆☆

シャザム!(デヴィッド・F・サンドバーグ)

 家族から自尊感情を傷つけるような揶揄いを受け続けると長じて心を病むと育児の本でよく目にするけど、悪役シヴァナはそんな感じだったから辛かった。(寄る辺なきもの、という意味で主人公の鏡像でもあるけど、これはヒーローものの定番ですね。)でも考えてみたら、魔術師のお爺さんが「英雄」候補として呼びつけたあげく、お前はふさわしくないとか言っちゃうのが最後の一押しだったのではなかろうか(ちっちゃい子相手に!)。そんなだったら事前によく吟味した上で呼べばいいのにね。

 ともあれ、ビターな味わいもあって、予想よりずいぶん面白かったです。マーベルにない感じの作品だったのも良かったのかな。

☆☆☆1/2

ターミネーター:ニュー・フェイト(ティム・ミラー)

 (ネタバレです。)全体的にすごく無理がある脚本で、「スカイネット亡き後も送り込まれ続けるターミネーター」という設定も飲み込みにくいし、ダニーが標的として狙われる理由も若干弱いし、それを教えてくれるのがこれまたターミネーター(改心後)というのも苦しいと思いました。リンダ・ハミルトンシュワルツェネッガーの共演という前提ありきだからとは思うけれど、もうちょっと企画を煮詰めてからスタートすればよかったのにね。

 根本的な話をすれば、タイムマシンがこんなにカジュアルに使える世界、というのがそもそも無理があると思うんですよね…2作目までは一期一会感がまだあったけど、これだけ乱発されたらもうどうだっていいや…という感じが否めない。今作に新鮮さが感じられる点を敢えて挙げれば、メキシコの日常を描いたザラついたシーンに突然機械生命体が!という異物感だったと思います。

☆☆☆

※リージョンっていうから、それってレギオンでは?と思ったのだけど、英語だと「リージョン」という発音になるんですね。

ランペイジ 巨獣大乱闘(ブラッド・ペイトン)

 怪獣映画らしさの点で『パシフィック・リム』より「らしい」し、スケールの取り扱いでは『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』より繊細さがあって良かった。前半の動物保護区の仲間が全然活躍しないところや、そもそも悪者姉弟は何がしたかったの?という脚本の乱暴さは色々あるけど、これくらい大雑把な娯楽作品があってもいいよね!と思いました。楽しかったです。

☆☆☆

※ところでワイデン姉(マリン・アッカーマン)と政府の謎組織エージェント(J・D・モーガン)は、よく考えたら『ウォッチメン』の因縁コンビでしたね。

彼らは生きていた(ピーター・ジャクソン)

 原題はThey Shall Not Grow Oldだから、「彼らが年を取ることはなかったろう」というような含みを持たせた題の方がよかったのでは、と思いましたが、それはさておき。最初は、現在において文書記録や日誌を朗読しているのだと思ってたのだけど、解説を読むと保管されていた音声記録だったそうで、映像もだけど、そういった内容を今に至るまできちんと保存している管理体制に敬服しました。

 とはいえ、やはり映像を24/秒のフレームに補完した技術が凄くて、(塹壕戦の悲惨さは知識として知ってはいたものの)いわゆるコマ落ちかつ白黒のカタカタした映像の印象で、チャップリンの『担へ銃』※的な牧歌的な戦争をイメージしてしまいがちなところ、当時の戦争の日常がまざまざと再現されていて臨場感が段違いでした。でもよく考えたら、そのオリジナルフィルムが撮影された環境は、今みたいにデジタルカメラで機動力がある訳ではないし交換フィルムを抱えてなのだから、あれだけ接写するのはすさまじいものがありますよね。

 内容面では、ドキュメンタリーのスタイルとして、いわゆる俯瞰的な「現在から顧みた当時の状況説明」を排して、ひたすら個人の視点を積み上げていくことを選択しているのが肝だったような気がします。(一兵士の感想としては100%事実なんだけど、全体の状況を考えたときに世界の真実とイコールではない部分がある。ということを行間が示唆している。)そういう意味では観客にリテラシーが求められる作品だと思いました。

 ところで、メディアが発達していない頃だし、英としては「勝った」戦争なのに、帰還兵は歓迎されなかったというのが意外でした。そういう厭戦ムードというのはベトナム戦争くらいからと思い込んでいたから…でもやっぱりそうだったんだろうなという気がしました。

☆☆☆1/2

※テーマそのものは反戦風刺映画なんですが。