スリー・ビルボード(マーティン・マクドナー)

 『ヒットマンズ・レクイエム』を観て、オフビートという言葉でも上手くいえない変な映画を撮る人だなと思ったのだけど。今作はむしろ舞台でも成立する話だな、というのが第一印象で、事後に実は劇作家として既に名を成した人だったのだと知って、さもありなんと思ったことでした。

 もちろんこの映画は、映画ならではの表現としか言いようがない巧みな演出と描写があって、だからこそアカデミー賞でも話題の中心になった訳ですが。舞台的であると感じた理由は、むしろ物語の構造というか人間関係の抜き差しならなさに眼目が置かれている点で、考え抜かれた人物配置と展開が、むしろその精緻さ故に作り手の存在が前景化するというか。役者陣の見事さのおかげで、ためにする机上の話だな、とまでは思わないのだけど、観客の気持ちに揺さぶりをかけることに注力されている感じが、演劇であれば気にならなかったのではないか、という気持ちになりました。

☆☆☆