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シン・ゴジラ(庵野秀明)

 ファンの人が鼻息荒く「日本映画史に残る!」とまでいうほどの手放しの絶賛ではなかったのだけど、単純に面白かった、とも言い難いような、一種名状しがたい映画ならではの感興を催すという意味で、やはり傑作だと思いました。
 物語全体のバランスもいいとは言い難いし、ごつごつした異形の作品だな、という印象。特に「あいつ」が初めて画面に姿を現したときは、ソフビ人形のようなキッチュな造形であるにも関わらず、不思議と妙なリアルさを備えていて、鑑賞後もモヤモヤと心に残ります。(個人的には世評の高さの3割ほどは「あいつ」に負うところが大きいと思う。あの造形をディレクションできるという点だけでも監督の才能は証明されている、ような気がする。)
 ちょっと前のギャレス・エドワーズ版は、トレーラーの時点では「災厄としてのゴジラに、例えそれが絶望的であっても挑まないわけにはいかない人類の悲壮な戦い」を描いてる風で、これは期待できるな!と思って実際観たらガメラだった、という顛末だった訳ですが、あのトレーラーの気分に忠実だったのはむしろ今作だった、という嬉しさがありました。しかし世間一般の感想はどうなのかよく分からないのだけど、ディザスター映画のカタルシスはあまり感じられなくて※1、大破壊がひっきりなしに、というのではない、地味だが確実に関東の人が困る状況が粛々と進行するという、現実味を帯びた展開であるために、観終わったあとも一抹のどんよりとした気分が残る印象でした。
 意図通りとはいえ、あまりに着ぐるみ然としたゴジラの造形はいかがなものか(せっかくのCG化なのに)とか、役者陣の悪い意味でいかにも特撮映画的な拙い感情演出※2、などの不満点はあったのですが、一方、素晴らしいと思ったのは「お金のかけどころをよく理解している」点。作りが荒くても観客が心の目で補完してくれる、という部分はざっくりと、逆に都市破壊のミニチュアワークや戦闘するCGの作り込みなど、ここで手を抜いたら映画全体が安っぽくなってしまう、というところは心血を注いでやってるのがこちらに伝わってくる、そういうメリハリの効いた配分でした。
 戒厳令下の東京ということで『パトレイバー2』が引き合いに出されるのもむべなるかな、と思うけど、ifを弄ぶような姿勢が鼻についたあちらよりも、こちらの方が面白く観られた気がします。むしろ傑作「怪獣」映画だった『パトレイバー3』にもっと言及があってもいいのにな。
☆☆☆☆1/2
※1 結末にすっきりしないものを見せて終わるから、という意味ではありません。
※2 カヨコ・アン・パタースンは、あんな80年代のラジオDJみたいな感じじゃなくて、逆張りで「日本語」がめちゃめちゃ流暢という設定だったら、なるほどわざわざ日本に送り込まれるだけのことはあるな、ってなったのにな。