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スタッキング可能(松田青子)

 話題になっていた本ですね。装丁含め「ナイスセンスな案配」がトータルパッケージとして高評価だった理由である気がします。
 表題作については、個人的にはいかにも現代文学的なトリッキーな構造というものがあまり好みでないので、正攻法で書いてほしいという気がしたのですが、まあこれは好みなので…。「所詮歯車に過ぎない」という代替可能性を、諦念だけではなく、それぞれの立場で同じような悩みを抱えた「あなたに似た人」という(軽やかな)視点で捉えなおした点で、会社小説としての語りの構造の必然性はあるんだけど。もったいなかったのは「スタッキング可能」を絵解きしちゃうところで、あえて書かなくても意図は伝わったのではないか。
 収録作中、一番好きだったのは『もうすぐ結婚する女』。スタイルとテーマがいわゆるオーソドックスな従来の小説的だから、というのもあるかもしれないけど、些細な日常描写から登場人物のバックグラウンドがパッと展開する瞬発力に地力を感じたから。特に夫や母親の視点のナチュラルさ(「頭で書いている」と感じさせない感じ)は小説家としての膂力を見せられた気がしました。※
☆☆☆1/2(『もうすぐ結婚する女』は☆☆☆☆)
※娘が使っている食器が百均じゃなくてなんだかほっとした、という目線など、グッとくる描写でした。