ウルヴァリン: SAMURAI(ジェームズ・マンゴールド)

 フジヤマ、ゲイシャはさすがに出てこなかったけど、シンカンセン、パチンコ、ヤクザ、ラブホテルというガイジンが考えるニッポンの風景がてんこ盛り※1、まさしく期待通りの映画でした。そういう雑多な要素を学生向け定食屋(でも昼時は会社員多数)みたいにそつなく料理しきった点、さすがザ・職人監督マンゴールド、オモテナシ精神がよく分かってる。(候補だったジョゼ・パジーリャの描く、ハードコアな県警対組織暴力を観たかった気もするけど。それは『ロボコップ』まで楽しみに取っておくか。)
 ところで、マリコを守る動機が詰まる所「ひとめぼれ」というのは、最初にいわくありげな視線を交わしてた割に、ザックリというか、逆にリアルというか・・・。
 そういえばアクションの空間的な組み立てが的確なので、非常に見やすかったことを申し添えます。葬儀場からの逃避行で弓矢の射手を設定していたのは視点の導入が自然という意味でもで巧かったな。葬儀場の屋根瓦にニンジャが張り付いてるのは不自然だけど。
 ヒロイン二人が外国人の思うアジア人要素を強調したような感じの文字どおりマンガみたいな喪服美人、Kawaiiキャラで笑った(しかし二人とも好演でしたね)。その点今回唯一の悪ミュータントであるヴァイパーは使い捨てキャラでモッタイナイ(くどすぎた?)。せっかく『裏切りのサーカス』で注目してたスヴェトラーナ・コドチェンコワだったのに、扱いが中途半端なんだもの…
☆☆☆1/2
※1 その意味で、『ブラック・レイン』オマージュの匂いも若干ありました。
※1−2 ネタバレ補足:そういえばビジュアルのみならず、あんまりいうとあれだけど、ブラック・レインとはなにか、ということでもあるし。シリアスにテーマを云々する映画ではありませんが、危険を顧みず外国人捕虜を救うような心の持ち主だった矢志田青年が、焼け野原を目にして心の奥底に暗いものを宿らせた、形振り構わぬ人間に豹変した、という設定は、『ブラック・レイン』で若山富三郎演じる親分が言っていた「お前らがあの爆弾を落として〜」というセリフの残響のようにも思えるし。
そもそもアメコミX-Menの出自が「核の恐怖」モチーフにあると考えたら、なかなか複雑な話ではあるけれど。