ブロンソン(ニコラス・ウィンディング・レフン)

 監督作品は『ドライヴ』しか見たことがなかったけど、80年代の意匠でニューシネマ風アクションをやる、というのはあえて選択したスタイルだったのだなとよくわかりました。というのもこちらは全然違うから。ちなみに今作はイギリスが舞台だからか、リチャード・レスターなんかの英国不条理喜劇の雰囲気もあったりして。(そういえば特異なライティングはこちらでも健在でした。)主人公がここぞという時には正装するのもなんだか英国を感じます。
 しかしなんといってもトム・ハーディの熱演、怪演!上手い人なんだとは思っていたけれど、かつ巧い役者だったんですね。済みません正直ちょっと侮ってた。暴力でしか自己表現できない男の半生を、面白うてやがて悲しきなトーンで描いていく映画なんですが、そうはいっても終始バイオレントすぎてちょっと観ていられない・・・となりそうなところを彼のチャームでギリギリ成立させていたという印象※1。そういう意味でも見どころは多かったし、トム・ハーディのポテンシャルを引き出した監督の手腕も大きいと思いました※2。なるほど自己プロデュースに長けたライアン・ゴズリングがレフン監督を指名するわけだな、と大いに納得した次第。
☆☆☆☆
※1 しかし、なぜこういう人になっちゃったのか、という背景についてはバッサリスルーする潔さ。分かった風な理屈を中途半端に付け足したりしない。そういう点も独特。
※2 いろいろな語り口の手数で勝負する作品でもあるので、格好のショウケース、ポートフォリオとしてトム・ハーディには追い風になりましたよね。