リンカーン/秘密の書(ティムール・ベクマンベトフ)

 リンカーンは実はヴァンパイア・ハンターでもあったのでした!という出オチ企画なのでそもそも物語には期待してなかったのだけど、それにしてもベクマンベトフ作品にしては存外薄味。
・いくつかのシーンは先日読んだ『フィーヴァードリーム』まんまの画で、話も似てなくもないからむしろあちらを映画化したら良かったのでは?
・とも思ったのだけど、これからもリンカーン企画が競作されているように、グダグダな雰囲気のある現在の国のあり方と比較して、自分たちのルーツを思い起こそう、という機運があるのかもしれないですね。(それを撮っているのがカザフスタンの人というのがまたアメリカ的。)
・ヒロイン役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドは作品ごとの印象が違って戸惑うのだけど、今回は福田彩乃に似すぎてて集中できなかった…
・似てるといえば主人公は若いリーアム・ニーソンみたいだったな。
・ところで南軍を「手段を択ばない悪者」的に描くのは、今でもレベル・フラッグを掲揚する人もいるアメリカでの興行を考えたときにどうだったんだろう、と他人事ながら心配になりました。※
・パンチに乏しいという印象を受ける最大の原因は、敵役であるヴァンパイアのブラッドマスターであるアダムに悪のカリスマとしての魅力が感じられない点だと思う。気が遠くなるほどの年月を生きてきた凄み、みたいなものがないし、自分と血族をこれからどうしたいのか、言行が場当たり的でよく分からなかった。
・ベクマンベトフは思いついても通常なら画にしてやろうとは思わないような無茶なアイディアを力技で撮ってしまう膂力が魅力だけど、今回も頑張ってた。しかしもう一つの魅力である「ストレンジな味わい」(『ウォンテッド』の後半のツイストみたいな)には乏しかった印象。これは企画のせいだと思うけれど…
・という訳で監督にはナイト・ウォッチ三部作の完結編を早いとこものにしてほしいと思いましたよ。
☆☆☆
※ちょっと物足りない結果だったようですね(初登場での3位が最高)。