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フィーヴァードリーム(ジョージ・R・R・マーティン)

 南北戦争前夜のアメリカ。自然災害で船を失ったマーシュは未だその失意の底にあった。ある夜、そんな彼を一人の男が訪れこう申し出る、「金に糸目を付けず資金提供をするので、蒸気船を建造し共同経営者として共に船旅をしたい」と。かねてからの野望を形にしたマーシュは、男の夜行性の日常やふいに姿を消す奇矯な振る舞いにも目をつぶろうと努力する。しかし、度重なる行為に耐え兼ね、ついに真意を問いただすのだったが、彼の素性は想像を遥かに超えたものだった…
 読んでいる最中、二つの作品を思い起こしておりました。
・ひとつめは『トム・ソーヤーの冒険』(とくにアニメ版)。あちらをサニーサイドとすると、奴隷制度の実態や朗らかなミシシッピ河畔の町の裏の顔をありありと描き出すこちらはダークサイド。外輪式蒸気船での生活のディテールや海の男ならぬ川の男の気質など、時代風俗の再現が素晴らしい。(考えてみたらマーク・トウェインというペンネームは蒸気船の測深手の合図から採っているわけで。)
・そしてもう一つは、南部ゴシックの意匠に目をつぶって、思い切りドメスティックな方面に目を向けたら・・・ということで『鬼太郎の誕生』。滅びゆく種族への惜別の念(これは失われていく古き良き文化への想いが二重写しになっているようで)、そして貴種流離譚。しかしこの作品ではその方面がやや駆け足なので、そこが物足りなかった感も。※
・文化の爛熟期のにおいまでが再現されているようで。見たことのないものをまるで見てきたように描き出す筆力というのは、たしかにジャック・ヴァンスの系譜の後継者をもって自任する実にこの作者らしい作品だったという気がしました。
☆☆☆1/2
※逆にいえば、不死に近い種族と限りある命の人類の間で奇跡的に成り立った友情、という一期一会な感じを大事にしたかったということかもしれませんね。